「学校に行きたくない……」
中学生の子どもからそう言われたら、家族はどう対応すればいいのでしょうか。
自我の芽生え、思春期、受験や勉強、さまざまな変化に追いつけず不安定になってしまう中学生は多いもの。
そこで今回は、中学生が不登校になった時の対応方法や進路のことなどについて、ご紹介します。
- ◆目次
中学生が不登校になる原因
中学生が不登校になる原因としてよく知られているのが“中1ギャップ”です。
小学校から中学校へと上がる時、子どもの周りでは様々な変化があります。
授業は教科担当制となり、クラスの人数も増え、授業時間も長くなり……。そういった学習・生活面の変化に適応できず、不登校やいじめ、非行などが大きく増加するのです。
しかしそれ以外にも、さまざまな要因があります。
いじめ、人間関係での悩み
クラスメイトや担任の先生とのトラブルやいじめなど、人間関係の悩みから学校に行きにくくなる子もいます。
特に中学校では、クラス単位で行動することが多いので、クラスの中で居場所が見つけられないと、学校自体が居心地の悪い場所になってしまうんですよね。
学習面のプレッシャーによる息切れ
特に中学受験をした子の場合には、学習面のプレッシャーから息切れ・無気力の症状を引き起こすことがあります。
周りが口に出してはいなくても、「もっと良い点数を取らないと」「みんなに追いつかないと」と自らを追い詰めてしまうのです。
うつ・精神疾患・体調不良
思春期うつやパニック障害、睡眠障害など、身体の調子を崩して学校に行けなくなるケースもあります。
精神面の負担が体調に表れている場合もあり、その場合は病院に行っても原因がなかなか分からず、解決まで時間を要することになります。
低血圧・起立性調節障害などの体質
朝起きられないなど、本人の体質が学校生活のリズムと合っていない場合も、学校には行きにくくなるでしょう。
低血糖や低血圧などさまざまな要因がありますが、「甘え」と取られることも多く、その奥にあるものには目が届きにくいのが現状です。
アスペルガーや適応障害など
「集団行動が苦手」「長時間1つのことに取り組めない」といった本人の性質・特性により、学校に行きにくくなる場合もあります。
特別支援教室(学校)などを利用することもできますが、本人が通常学級での学習を望んだり、自身の性質を受け入れられなかったりする可能性もあります。
理由がわからない場合も
さまざまな理由が絡まっていることも多く、また「なんとなく学校に行きにくい……」など、明確な理由はないが学校に行けないケースもあります。
その場合には、理由を無理に明らかにしようとするよりも、本人が何に困っているのかに目を向け、適切なサポートをおこなうことが大切と考えられます。
▽不登校生の人数や定義についてはこちらにまとめました。よければご覧ください。
不登校中って何してるの?家での過ごし方
中学生の時不登校だったわたしの家での過ごし方
わたしが不登校になった当初は、気力も体力も底の底まですり減っていました。
昼頃に起きて、食事をとり、なんとなくテレビを観て、自室で漫画やゲームをして、夜中みんなが寝静まった頃に夜食を食べ、朝日が昇ると共に眠る……、そんな生活の繰り返しです。
「楽な生活じゃないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそんなことはありませんでした。
四六時中、追い詰められ、自分を責め続けるのです。
一瞬たりとも気の休まる時間はなく、食事中も、読書中も、入浴中でさえも、常に心が締め付けられているようでした。
3ヶ月ほど経って少しずつ元気になってからは、勉強に取り組むこともありましたが、もう「どこが分からないかも分からない」状態。
学校から届く定期テストの分からなさ具合に絶望し、結局長続きはしませんでした。
睡眠障害や心の不安定が表れることも
わたしはまだ軽度なほうだと思いますが、それでも眠るのには30分以上かかっていましたし、日中に人の話し声が聞こえるだけでも呼吸が浅くなるような状態でした。
不登校の子どもの多くは、一時的に心がすごく不安定になり、睡眠障害などがあらわれます。
重症な場合だと、精神面の不安からうつ病などを発症したり、リストカットなどが癖付いたりすることもあります。
もしそうなった時は、きちんと専門家にアドバイスを求め、一人で解決しようとしないようにしましょう。
間違っても、無理にものを取り上げたり、身体を押さえつけたりしてはいけません。
不登校って病気?元気なのに学校に行かない子どもの心理と対処法
不登校は、あくまで学校に行けない・行かない状態のことを指すもので、病気や疾患ではありません。 しかし今も、「不登校になるのは精神......
甘えたがる人もいる
いわゆる赤ちゃん返りという状態ですね、甘えたがりになる人もいます。
学校や家庭で優等生タイプである人や、我慢を強いられてきた人は、その反動でこういった状態になりやすいようです。
欲求がある程度満たされると自然と落ち着くことが多いようですが、抑圧していた期間が長い場合などには、解消まで時間がかかると考えられます。
居心地の悪さから、非行に走る場合も
家庭や学校での居場所のなさや居心地の悪さから、家出や深夜徘徊など、非行に走る場合もあります。
事件や事故に巻き込まれたり、非行グループに所属したりすることもあるため、連携して子どもを保護しなければなりません。
ただし、無理に連れ戻そうとするのではなく、まずは子どもの気持ちを受け止め、話を聴くことが大切です。
単なる素行不良ではなく、それが子どもなりのSOSであることを忘れずに、対応しましょう。
克服させようとする前に。親が知るべきこと
「早く学校に戻さないと!」
不登校になってすぐは、焦ってしまいますよね。
そんな親御さんに、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
平日の朝は不安定、夜が更けるにつれて元気になる傾向
不登校の子にとって、みんなが登校する朝はすごく怖く、不安になる時間帯です。
逆に、出歩く人が少なくなり、人目を気にしなくて済む夜間は、心の休まるひと時。
だから平日の朝は心身が不安定になり、夜が更けるにつれて元気になっていきます。
1日の中で調子の変動が激しいので、「仮病ではないか」と思われてしまうかもしれませんが、メンタル面の不調が身体にもあらわれているに過ぎないのですね。
昼夜逆転・ネット依存・スマホ依存は回復のために必要
夜眠れないのは、次の日が来るのが怖いからです。
ネットやスマホに依存するのは、現実の人間関係が怖いからです。
ネットやスマホは、不登校の子にとっては「逃げ場」のようなもの。
スマホを無理やり取り上げるのは、「逃げ場」を取り上げるのと同義だと思ってください。
無理に辞めさせなくても、心が安定してくれば、だんだんとゲームの時間は減っていきます。
無理やり行かせても状況は良くならない
多くの親御さんは、子どもが不登校になった時、無理にでも学校に行かせようとします。
車で送迎したり、ひっぱったり、急かしたり。
でも、学校を休み始めた子は、もう限界なんです。
仮にそこで学校に行ったとしても、それは「子どものつらい気持ちにフタをしている」ようなもの。
やがて、また限界が訪れてしまいます。
まずはしっかり、休ませてあげてください。
お子さんが自ら動き出すまで、待ってあげてもらえませんか。
欠席日数の増加、遅刻や無断欠席は「助けて」のサイン
お子さんの欠席や遅刻が増えたり、無断欠席をしたりしたら、それは「SOS」だと思っていただきたいです。
多くの子どもは、学校に行けなく・行かなくなる前に、信頼している大人に対して、なんらかのサインを出します。
食事をとらなくなる、友達と話さなくなる、外出しなくなるなど、サインはさまざま。
ですが、特に無断欠席や遅刻の増加は単なる非行として扱われ、SOSに気付きづらいので注意が必要です。
親の対応法・かける言葉
子どもが不登校になった時、まず何をどうすればいいのか分からず、困ってしまいますよね。
特に親御さんが困ることの多いものをいくつかご紹介します。
学校との連絡方法や給食費の停止などを話し合う
毎日毎日、同じような連絡を繰り返すうちに疲弊していく親御さんが多くいます。
早い段階で学校と相談し、連絡方法などを決めておきましょう。
細かいことですが、給食費の停止やプリントの管理などを早いうちに話しておくと、後々の負担がだいぶ軽くなるはずです。
親の会やイベントに参加してみる
子どもの不登校に悩んでいると、つい、自分の味方なんて一人もいないように感じられてしまいます。
「この子はわたしが守らないと」
その使命感、愛情は素晴らしいものですが、長く保てるものではありません。
気持ちが落ち着いてきてからで大丈夫なので、ぜひ親の会やイベントに参加されてみてください。
自分と同じ立場にある人と出会うだけでも、少し、見える景色が変わると思いますよ。
勉強しない・無気力な子どもはまず「安心」させる
繰り返しになりますが、学校に行かなくなった子は、限界を迎えています。
勉強など、いろいろなことが心配になると思いますが、まずは「安心」させてあげてください。
家庭の中では、安全に過ごせること。
あなたの存在を否定する人はここにはいないこと。
何かあったら、わたしたち家族がしっかりあなたを守ること。
丁寧に伝えていけば、焦らなくても、自然と子どもから動き出します。
学校からの知らせや手紙は、欲しいかを子どもに確認してから
担任の先生によっては、善意で「クラスメイトからの手紙」などを用意してくれることもあるでしょう。
しかし、それを渡すのは、少し慎重になってください。
不登校になった子どもの中には、学校に恐怖心を持っている子や、クラスメイトを嫌っている子も多くいます。
そんな子たちにとって、学校からの便りやクラスメイトたちからの手紙は、少なくとも「支え」になるものではありません。
渡す際には、子どものことをよく見て、慎重に判断してください。
高校進学はどうなる?進路について
中学校で不登校になった場合、高校進学は目指せるのでしょうか。
中学生の不登校の場合、やはり「高校進学できるのか」と不安に思う方・ご家族は多いです。中学校までは義務教育なので進めるけれど、高校は受験に合格しなくてはいけませんから、心配になりますよね。
結論から言えば、中学生の時に不登校生でも高校進学は可能です。
神奈川県のクリエイティブスクールや東京都のチャレンジスクールなどのように、中学で十分に学業に取り組めなかった人のための高校や、配慮した受験制度を取り入れている学校もあります。在籍校の先生と相談しながら、お子さんに合った進路を考えてみてくださいね。
▽不登校生の高校受験についてはこちらのコラムに詳しくまとめました。
不登校でも公立高校への進学は目指せる
不登校でも公立高校への進学は目指せます。実際、わたしも中学時代に不登校を経験しましたが全日制の公立高校に進学しました。
ただし、公立高校の一部では「年間の欠席日数が30日を越える場合には、審議対象とする」などと表明しているところもあります。
希望する学校がある場合には、高校の個別相談などで話を聞いてみるといいでしょう。
高校進学のために、中学在籍中にできること
学力・学習習慣を身につけることが大切
いざ高校進学できても、中学時代の不登校期間が長いと、授業についていけなかったり、毎日の登下校が負担になったりする可能性があります。
高校進学を希望する場合には、基礎的な学力、そして毎日の学習習慣を身につけることが大切。いきなり長時間勉強する必要はないので、毎日少しずつ勉強に取り組むリズムを作っていきましょう。
在籍校によっては、家庭で学習した分を成績に反映したり、学習教材を用意したりなど、学習面で配慮してくれるかもしれません。学習方法などに不安がある場合には、家庭教師や塾などを利用してみるのもひとつです。
▽家庭教師の効果や選び方についてはこちらをご参照ください。
テストは受けられるのが理想
中間・期末試験といった定期テストは成績をつける中でも重視される傾向にあるので、きちんと受けられるのが理想です。
別室受験や在宅受験などを認めている学校もありますから、必要な配慮などがあれば一度相談してみましょう。
私立の場合は中学卒業が可能か先生に確認
私立中学校の場合は、出席できない状況が続くと卒業が難しくなる可能性もあります。
もし不安な方は、現在の欠席日数や卒業が可能かどうかを在籍校の先生に確認してみてください。
尚、公立中学校の場合には、卒業できなくなることはありません。
そのため、私立中学の生徒が不登校になると、地元の公立中学校に転校するケースも多いようです。
将来・その後のことは本人とよく話す
高校進学を含め、将来を考える上で最も重要なのは、本人の意思です。
今後はどうするのか、何から取り組むのか。
根気は必要になりますが、一つひとつお子さんとよく話し合えると良いですね。
▽学校復帰する以外にも、将来の選択肢はたくさんあります。
不登校からの立ち直り方
再登校するにせよ、学校以外の居場所を探すにせよ、家で安心して過ごすにせよ、まずは身体と心を健康な状態にしなくてはいけません。
不登校から立ち直るのは段階がある
不登校から立ち直るのには、5つの段階があります。
不登校生は、今つらくなったのではありません。
ずっと前からつらくてしんどくて、それでもうまく助けを求められなくて、耐えられなくなって今の状態になっている。
だから、いきなり学校に戻ろうとしたり、必死に勉強したりしても、身体と心がついていけずにかえって疲弊してしまいます。
まずはお子さんの状況を確かめ、その段階や性格に合わせたサポート・過ごし方ができるよう心がけましょう。
1. 十分な休養を取り、悩みを話せる居場所を見つける
まず大切なのは、心と身体がきちんと休める環境をつくることです。特に心の休息が大切で、これが足りないままだと、一旦は回復してもまた苦しい状態になってしまいます。
そのために重要なのが、十分な休養を取れるようにすることと、悩みを話せる居場所を見つけることです。
「信頼しているからこそ自分の悩みを打ち明けられない」「心配をかけられない」というケースもあります。スクールカウンセラーやインターネットなどの利用も視野に入れて、子どもが安心できる居場所を見つけましょう。
▽どこに相談したらいいか分からない場合は、カウンセリングの利用も考えてみてください。
2. 同じ経験を持つ人の体験を聞き、一人じゃないことを知る
不登校って、すごく孤独なんですよね。
「こんなに苦しいのは自分ひとりなんじゃないか」「自分だけ学校に行けないのは自分が弱いからじゃないか」と思えてきてしまう。
昼間に同級生ぐらいの人たちの笑い声が聞こえてくるたび、ひっそりと孤独が押し寄せてくるのです。
今、誰とも話したくない気分なら無理する必要はありません。ひとりで自由に過ごす時間だって必要です。
でも、もし「ひとりで過ごすのがつらい」「誰かに話を聞いてほしい」と思っているなら、勇気を持って一歩踏み出してみてほしい。
特にオススメしているのは「同じ経験を持つ人の話を聞く」こと。
自分のことを話すのは不安でも、人の話を聞くのならできるのではないでしょうか。それを繰り返すうちに少しずつ楽になれて、いずれは自分のことも話せるようになるかもしれません。
3. 運動やイベント、好きなことに取り組んでみる
孤独感がおさまって身体と心が元気になってきたら、実際に活動してみましょう。
ここで留意してほしいのが「いきなり学校に行こうとしたり勉強したりする必要はない」ということ。
運動でもイベントでもインドアなことでも、なんでもかまいません。
自分の好きなこと、興味のあることから順に取り組んでいきましょう。
わたしの場合は、まずは愛犬の散歩や絵を描くことから始めました。
エネルギーが蓄えられてきたといっても、まだ100%元気になったわけではありませんからね。自分に合ったペースでやっていくことが大切です。
4. 再登校は本人が希望すればでいい
不登校から立ち直ると言うと再登校・学校復帰をイメージされる方が多いのですが、なにも全員がそこを目指す必要はありません。
学校に行きたいなら行けるように応援しますが、学校に行きたくないなら行かなくなったいいのです。
学校に行かなくたって勉強はできるし友達はつくれます。
あくまで本人が希望する道を尊重して、再登校に関しても必ずお子さんの話をよく聞いてから考えるようにしてください。
不登校は不幸じゃない。「ホームスクーリング」という考え方
皆さんは、「ホームスクーリング」という言葉をご存知ですか? ホームスクーリングは、「ホームスクール」「ホームエデュケーション」等とも......
5. 体力・学力アップで自信を養う
不登校生の多くは、一日の大半を家で過ごすようになります。
同級生たちと顔を合わせる可能性や、日中に出かけている子どもへ向けられる視線を考えると、なかなか外出しにくくなってしまうんですよね。
無理に外へ出向く必要はありませんが、やはり家に籠りきりだと体力が落ちるだけでなく精神面も落ち込みやすくなるもの。少しずつでも日常的に運動や勉強に取り組むようにして、体力・学力を養いましょう。
一日に一気に進めるのではなく、毎日コツコツと取り組んでいくのがポイントです。
これらの力が付いてくると、子ども自身が自身を持てるようにもなります。
▽不登校から回復する段階について詳しく知りたい方は、ぜひこちらのコラムを参考にしてください。
まとめ
中学生が不登校になった時の疑問・不安を解消できたでしょうか。
不登校になってすぐは、心細くて、先が見えなくて、不安な夜を過ごすことになると思います。
でも、覚えていてください。
わたしたちは、必ずあなたがたの味方になります。
一人で抱え込まなくていいということだけでも、忘れないでいてくれたら嬉しいです(*´`)
- ママたちの声を集めて届けるSNSはじめました。