「明日は行くよ」不登校の子どもがそう言い続ける理由

「明日は行くから」「月曜日からは学校行くよ」

そう言ったはいいものの、やっぱり朝になるとお腹が痛い。また行けなくなる……。

不登校になると、そういうような発言を繰り返したり、朝と夜とで態度が全然違ったりすることがあります。周りとしてはどうサポートしたらいいかも分からないし、期待が裏切られたような気持ちになる人もいるかもしれません。でもお子さん自身も、あなたと同じように苦しんでいるのです。

「嘘吐き」と言われた夜のこと

わたしは中学1年生の春、不登校になりました。両親に反対されるだろうと思っていたけれど、思いのほかスムーズに「ゆっくり休みなよ」と不登校を受け入れてくれたんです。しかし、不登校になって一ヶ月、二ヶ月と経つにつれて、だんだんと両親の言動が変わってきました。

「保健室に行ってもいいから」
「途中で帰ってきてもいいから」
「遅刻していってもいいから」

学校に行かせようとしている両親。学校に行けるような状態ではないけど、それを言葉で伝えられないわたし。その溝は日を追うごとに大きくなって、わたしは必死に両親の思い描く状態になろうとしました。

「明日、先生と面談してくるから」

ある日わたしが父にそう言うと、父は大層喜んで。当時わたしが好きだったたこ焼きを買って帰ってきて、家でもご機嫌でした。でも翌日、わたしは学校には行けませんでした。

約束した時間が近づいてくる。わたしはリビングにいて、そろそろ出ないと間に合わない。時計の針はどんどん進んでいって、ついに約束の時間になる。わたしはリビングのソファに座ったまま。

自分がどうしようもなく情けなくて、でも行かなくて済んですごくほっとしたんです。時間が過ぎるまで、不安で怖くて仕方がなかった。

もちろん、両親や先生への申し訳なさとか、これから怒られるんだろうなとか、やっぱり自分はダメだとか、ネガティブな感情がたくさんあったけれど……。少なくともあの「学校」という空間に行かなくて済むということが、当時のわたしにとってはなにより大切だったんです。

たとえ、夜中に父親から「嘘吐き」と吐き捨てられたとしても。

親の期待に応えられないのが怖かった

声の低さ、強さ、直後に聞こえた溜息の音、遠ざかっていく足音。全部覚えています。

「嘘吐き」

その通りだと思いました。だってわたしは、嘘を吐いたのだから。行くと言って行かなかったのだから。

両親を裏切ってしまった。
このままでは、「いらない子」になってしまう。

両親の期待に応えられないのが怖くて、学校に行くことすらできない自分が情けなくて。翌日からの父の態度はいつものそれと大差なかったけれど、わたしはあの夜のことが忘れられなくて。次第に学校にいる時と同じ苦しさ、しんどさを家の中でも感じるようになりました。

「3学期からは、行くから」

当時、中学1年生の2学期が終わろうという頃。クラス替えがあるような時期でもないし担任の先生も替わらないし事態が好転するとは思えなかったけれど、わたしはどうにか「普通」になろうとしたんだと思います。

学校に行っていれば、家の中で我儘を言わなければ、両親の期待に応えれば、わたしはきっと「家にいてもいい」って思える。

そんなネガティブでしかない学校復帰、うまくいくはずがありません。結局心に限界がきて、2年生の春には不登校に戻りました。両親の「もう、この子は駄目だ」と諦めたような目が、今でも脳裏に焼き付いています

どうか「行けなくても行ってもあなたは生きているだけでいい」と伝えてほしい

学校に行かないこと、夜になると元気なこと、体調不良を訴えるのに病院に行っても何もないこと、勉強はしないのにゲームは楽しそうにやっていること。その態度や気分の不安定さに困惑する方は多いと思います。実際、わたしの周りの人も、わたしの態度がコロコロ変わることに戸惑っていました。

それらはすべて、その子なりのSOSです。

夜になると元気になるのは、「学校に行かなきゃいけないのに行ってない」という苦しみから逃れられるからです。
体調不良を訴えるのは、嘘を吐いているわけではありません。本当にお腹が痛いし、本当に頭が痛いのです。でも精神的な部分からくるものだから、検査しても何も異常は見つからないのです。
勉強はしないのにゲームはするのは、ゲームをしている間は現実を見なくて済むからです。

「明日は行くから」と言って行けないことを繰り返すのは、家族や周りの人を傷つけたいからではありません。むしろ家族のことを思えばこその言葉です。

わたしは「学校には行きたくない」という気持ちをずっと抱えながらその言動を繰り返していましたが、中には「学校に行きたい」と思っていて、でも身体や心がついていけてない人もいます。自分を鼓舞するような意味も込めて「明日は行く」と言う人もいます。

それぞれ、必死に戦っています。恐怖と、焦りと、孤独と。いろんな気持ちを抱えながら、でもそれをうまく言葉にできないまま、一人で戦っています。

どうか「行けなくても行ってもあなたは生きているだけでいい」と伝えてはもらえませんか。その子を独りぼっちにしないでください。上から引っ張り上げるのでも、下から押し上げるでもなく、隣に立ってはもらえませんか。

隣に立ってくれる人が見つかったら、独りぼっちじゃなくなったら、きっともう大丈夫。学校に行くかどうかは分からないけれど、その人なりの道を見つけられるはずです。

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