【インタビュー】親の会「NPO法人 First Step」に立ち上げの経緯を聞いてみました

親の会インタビュー企画!
今回は全国各地で親の会を開催している「NPO法人 First Step」について、立ち上げから今に至るまでのお話を聞いてみました。

まずは自己紹介をお願いします

理事長の岩崎雨人と申します。

HONDAのバイク開発者から、運送会社経営を経て、現在はFirstStepの運営に専念しています。

長距離JOGが趣味で、100kmウルトラマラソンを完走したことがあるのが自慢です。写真はマラソン大会の裏方に回った時のもの。ふざけた身なりですみません。

 

NPO法人 First Stepはどのような親の会ですか

FirstStepは、不登校・ひきこもりの親(家族)の相談事業に力点を置いて、当事者の自立を支援するNPO法人です。

中核スタッフの過半はピアサポーター(元当事者やその親)で、相談者のやりきれない気持ちを理解しやすい人たちです。そのスタッフたちの活動を有資格者などのスタッフたちが援護射撃してくれています。

豊富な経験にもとづく柔軟な発想と行動で、困っているみなさんの「はじめの一歩」を応援します。プログラムへの取り組みには真剣ですが、会の雰囲気は明るく、笑いがたえません。

ご自身で親の会を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください

前身団体「始める一歩の会」の活動を継承し、NPO法人FirstStepを立ち上げました。活動自体には20年以上に歴史があります。

元当事者の親を中心としたスタッフたちが、不登校・ひきこもりで孤立しがちな多くの家族を支援し、前向きな展開のきっかけづくりをしてきました。その過程で培ったノウハウやカウンセリングなどの専門知を用いて、親の気づき・変化の機会を増やし、当事者である子供の変化を図る活動をより広めたく、NPOを設立しました。

話題のオープンダイアローグの手法にも似たグループ対話「親の勉強会」を入り口として、家族の個別相談、当事者への直接的・間接的支援など、タイミングと状況に応じたアプローチで、家庭環境の改善のお手伝いを提供しています。

実際に立ち上げてみてどんなことを感じましたか?

事務作業も含めた、やることの多さです。相談者である親御さんや、当事者のお子さんをサポートすることは慣れているのですが、企画、公報、会計、行政との折衝、補助金・助成金の獲得……などなど、事務局の運営はまだまだ初心者です。

ボランティアスタッフを熱烈募集しております。とにかく人手が足りません。我こそはという方は、どしどしご連絡ください。詳細はホームページの「スタッフ募集」をお読みください。
https://1st-step.tokyo/cooperation/volunteer/

運営していて印象に残っていることがあれば教えてください

ちょっと前に、ある有名なひきこもり支援の方に、「ひきこもりの支援で大事なことは何ですか?」と聞かれたことがありました。

そのとき、自分は思わず「自分は自分のままでいいと思えることだ」と答えてしまいました。

ちょっと、質問された方の予想された返答、思惑とは筋違いの回答でしたね。否、かなり筋違いです。

継続的なケアとか、本人の意思を尊重したケアとか、そんな感じの答えを期待していたように思います。質問された方もその返答に「この人何言ってるのかな?」と困ったと思います。

自分は何故そんなことを言ってしまったのか?

その時、頭の中でひきこもりについて、自分は自分のままでいいのだ。というバカボンのパパ的な考えが何故か、頭の中で全体を占めるような感覚で考えがグルグル回っていて、なんでもいいから、キッカケがあればポロッと言葉に吐き出したかったのかもしれません。

今、「ひきこもりの支援で大事なことは何ですか?」と聞かれたら……。

困っている方に素直に「貴方はあなたのままでいい」と言えるだけの偽りのない確信をもつことと、相手を「尊敬すべき人格として対等である」とする立場でいること。

そして、無理ではあっても努力して、「あなたを知りたい」と思うことでしょうか?

これからどのような会にしていきたいですか?

私たちは、以下を活動の理念としています。

●Mission(会が社会に対してなすべきこと)

ひきこもり・不登校の当事者の苦しみを根本的になくす。

●Vision(会が目指すあるべき姿)

ひきこもりからの復帰には親子の信頼関係再構築が第一義である。加えて、適切なタイミングでの、長期にわたる継続的、かつ柔軟なケアに携わる第三者の介入を必要とすることが多い。
そのため、当事者に寄り添い、伴走できる実践的な支援者の育成に努める。また、その支援者が無償奉仕ではなく、生活維持できる組織作りを目指す。

●Value(会の構成員が具体的にやるべきこと)

当事者の復帰のためには、家族間の信頼関係再構築が最も重要であることを理解してもらう。

そのうえで、「親が変われば子が変わる」という理念のもと、「まず親こそが子の復帰に主体的に動かなければならない」ということを知ってもらう。

知ってもらったうえで、親、家族、支援専門家、カウンセラー、ピアサポーター、他の相談者、関係者とのグループ勉強会で、お互い対等な立場からの対話を通し、復帰への具体的な道を参加者全員で模索し、さらには実際に行動する。

そして、当事者が無理なく社会とつながり、孤独・孤立から解放され、自分自身のための人生を切り拓けるように支援する。

以上のうち、Valueの「当事者に寄り添い、伴走できる実践的な支援者の育成に努める。また、その支援者が無償奉仕ではなく、生活維持できる組織作りを目指す」は必ず成し遂げたい目標です。日本のひきこもり支援業界に足りないのは、専業のプロ支援者の存在だと痛感しているからです。

最後に、このページを見ている保護者の方々にメッセージをお願いします!

私たちの勉強会は、似たような状況の家族だけがあつまる勉強会ではありませんし、ひとりのカウンセラーが「これが解決方法だ」とアドバイスする勉強会でもありません。

一般的な勉強会は、喩えでいうと、山で道を見失ってしまった登山客たちが、こっちじゃない、あっちじゃないと右往左往しながら行き当たりばったり方式で道をさがしてみたり、また、偶然、案内板(でも、それは間違っているかもしれない?)を見つけ、これが正しいと思って道を探し出したようなものではないかと私は思います。

平面的な解決方法ですね。下手をすると、グルグルと同じ道に戻ってしまうリングワンダリングを起こしてしまいます。

私たちの勉強会では、自分たちとは関係ないと思われるような他の家族の話、年齢の異なる子供の家族の話を積極的に聞いたり、そのことについて対話したりします。

カウンセラーも一人ではありません。心理士、専門家、などが必ず何人か参加します。また、すでにひきこもり家族を持ったことのある経験者、ひきこもりの当事者であった人、ひきこもりに理解ある一般人が意見を述べたりします。

それは、あたかも平面的に道に迷って、アレコレ苦労して正しい道を探す方法から、たとえば、ドローンを使って、空中から正確な自分の位置を知り、全体の地形をリアルに把握するような立体的な問題把握をするようなものだと私は思っています。

一見関係ないと思う話も、根本的には家族の信頼関係回復という根本的課題(土台)での対話なので、グルグルと同じ思考を繰り返すことから脱却するには、同じ土台ににはあるが、全く異なった意見、話しを多数聞くこと(空中に飛び出すこと)が大切なのです。

回復に至る道は人それぞれ千差万別であり、ワンパターンな解決方法はありません。

そのためにも、できるだけ色々な意見を勉強会という池の中で攪拌させて、その池の中に相談者が浸ることで進むべき方向を自らの力で探し出してほしいと思っています。

……といった話に、少しでもピンと来た方は、ぜひご連絡ください!

 

――インタビューは以上です。
貴重なお話を聴かせていただき、ありがとうございました。

◆親の会「NPO法人 First Step」の詳細はこちら
https://miraitizu.com/parent-meeting/26763
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