現在日本では、およそクラスに1人、不登校生がいるのだそうです。
しかし高校生ともなると、不登校になった場合の学校の単位や卒業可否も気になりますし、卒業後・将来のことも考えていかなくてはなりません。
そこで今回は、高校生が不登校になった時の対応について、考えてみたいと思います。
子どものわがまま?高校生が不登校になる原因
高校生は、自ら受験する高校を選び進学しますから、不登校は一見「わがまま」にも思えるかもしれません。
まずは、高校生が不登校になる原因を考えてみましょう。
1. 起立性調節障害で朝起きれない
起立性調節障害をご存知でしょうか。
このほかにも、慢性疲労症候群やうつ病など、なんらかの病気・障害によって学校に行けなくなる子も多いのです。
出る症状としては、「朝起きれない」「倦怠感があって勉強に集中できない」といったものが多いため、「怠けているだけだ」と認識されてしまうこともあります。
2. 燃え尽き症候群などによる無気力
「難関大学合格!」など、大きな目標に向かって取り組むと、取り組んでいる間は良いのですが、それが叶わなかった時に急に無気力になってしまうことがあります。
これが、燃え尽き症候群。
緊張状態が長く続いた場合などにも発生しやすく、ひどい時には社会生活をおくることも難しくなってしまいます。
3. 勉強や人間関係のプレッシャー・ストレス
適度なストレスは人に良い影響を及ぼしますが、過度なストレスやプレッシャーは、その人の心を蝕む要因となります。
特に受験生や、難関大・医大などを目指す子どもの場合には、家族や先生からの期待や羨望の眼差しをストレスに感じやすくなります。
こういったストレスによって、心に傷を負ったり、頑張れなくなったりするのです。
4. 先生やクラスメイトが怖い
いじめや対人恐怖症などが原因となる場合もあります。
集団でのコミュニケーションや、先生・クラスメイトに対して恐怖心があり、クラスや学校に馴染めないのです。
特に高校までは担任制を導入している学校が多いため、クラスに馴染めないと途端に学校に行きにくくなります。
5. 理由が分からない場合も
不登校になる時、たった1つの理由が引き金となるのは極めて少なく、ほとんどの場合は複数の事情が絡み合います。
勉強がついていけないことからクラスメイトに馬鹿にされ始め、相談した先生に無視をされて学校への信頼感がなくなり不登校に……、といった具合です。
小さな問題がいくつもいくつも重なっている場合は、子ども本人が、「たいした悩みがあるわけではないが学校に行けない」「なぜ学校が嫌なのか、自分でも分からない」と感じていることもあります。
しかし、理由が分からない=大した問題ではない、というわけではありません。
理由が分からないからこそ、どういった問題が積み重なっているのか、どこかで前兆はなかったのか、しっかり知ることが大切です。
学年によって原因は異なる
上記で解説したように、不登校になる原因は人によってさまざま。
学年によっても、不登校になる原因は異なります。
1年生は「変化への戸惑い」や「クラス・担任の先生などとの相性」など。
2年生は、「中だるみによる無気力」、「理想と現実のギャップ」。
3年生は主に「将来への不安」や「受験などによる過度なプレッシャー」が原因として多いようです。
子どもが不登校に。その時親はどうすれば?
子どもが不登校になった時、親や家族、教職員など、周りの人はどう対応すれば良いのでしょうか。
不登校になった時に親がすべきことを、3つのステップにまとめました。
1. まずは家に「居場所」を作る
無理に学校に連れて行こうとしたり、怠けることを拒絶したりといったことは絶対にしてはいけません。
まずは家に居場所を作り、安心感を持ってもらいましょう。
居場所を作るには、
- 子どもが一人になれるスペース・時間を作る
- 学校や将来に関するキーワード(受験、勉強、登校、先生etc…)は極力言わない
- 何をするかはあくまで子ども自身に任せ、こちらからは口を出さない
といったことが大切です。
特に子どもの部屋・スペースは、絶対に立ち入らないようにしましょう。
「プライバシーが守られる」と知ってもらうことが、信頼・安心感に繋がります。
2. 学校の先生と連絡を取り合い、子どもの現状を把握する
不登校になる子どもの多くは、あらかじめなんらかのSOSを発信しています。
友達と話すことがなくなった、宿題の提出が遅く・できなくなった、遅刻や早退が増えた、趣味だったものをやらなくなった、テストの点数が落ちた、などなど……。
学校の先生と連絡を取り合い、そういったサインを出していなかったか、子どもが今何を感じ何を嫌がっているのかを把握しましょう。
長期の欠席が続く場合は、学校への連絡方法などについても話せると良いですね。
また、高校の場合は出席日数などが足りないと卒業できなくなってしまうため、「どれぐらい休んでもいいのか」「テストや学習はどう対応すればよいのか」といった部分も先生と話せると理想的です。
3. 決して焦らず、対策を急がない
親・家族からすると、「子どもが不登校になる」というのはとても心配なことだと思います。
学校に戻さないと、と焦って対応することも少なくないのではないでしょうか。
しかし、不登校というのは、「不登校になった時に苦しくなっている」のではないのです。
たくさん我慢して、たくさん考えて、たくさん苦しんで、悩んで、葛藤して、頑張って、それでも耐えられなくなって、学校に行けなくなっているのです。
回復には時間がかかります。
回復しきるまでにまた学校に行き始めてしまうと、社会復帰が余計遅くなることもあり得ます。
あくまで最終的な決断をするのは子ども自身なのですから、決して焦らずに、よく考えて対応するようにしましょう。
不登校になった時の単位は?卒業について
高校生が不登校になる時、「単位はどうなるのか」「卒業できるのか」といったことは気になりますよね。
出席日数が足りていないと補講・別室登校などでは難しい場合も
高校の場合、基本的には「授業時間のうち3分の2以上の出席」が必要になります。
この出席日数が足りていれば、授業に追いつけなくても補講や課題の提出でフォローしてくれる学校は多いようです。
逆に、出席日数が足りていない場合は、補講などでは単位認定が難しい場合もあります。
高校によって対応は異なるので、ぜひ在籍校に確認してみてください。
出席日数が足りなくなった場合、多くの高校は「学年制」であるため、その学年をやり直すことになります。
また、休学を導入している学校も少なくなく、一年間休学して体調を整えてからまた学校に通う、という子も多いようです。
転校・編入したいと思った時はどうすればいい?
「出席日数が足りない、しかし留年はしたくない……」という場合は、中退か転校をすることになります。
全日制の高校に転校したい場合は、編入先の高校の試験を受け、合格すれば編入できます。
しかし、生徒数が定員に達している高校には編入できないなどの制限もあり、また、「次の学校でも不登校になるのではないか……」と不安になる子ども・親も多いので、通信制や定時制の高校に転校する人も多数います。
出席日数が足りなくなってきた時点で学校側から連絡があると思うので、その際に今後についてよく話し合えると良いですね。
卒業後の進路はさまざま
高校卒業後の進路はさまざま。
普通に通っている子と同じように、大学や専門学校へ進学する子もいれば、就職する子もいます。
また、自身が苦労した経験から、「子どもの居場所を作りたい」「中高生の支援がしたい」と思う方が多いようです。
仮に高校卒業できなかった場合も、高校卒業程度認定試験(旧:大検)を取得することで、進学を目指すことが可能です。
不登校はいつまで……。復帰・復学はすすめてもいいのか
子どもが不登校になった時、「早く学校に戻ってほしい」というのが親の本音ではないでしょうか。
しかし、無理に学校に連れて行ったり、声掛けしたりしても、なかなかうまくいかないものですよね。
「学校には行ってほしい」と思うけど……。
ここで考えていただきたいのが、“なぜ「学校に行ってほしい」と思うのか”ということです。
自分たちが子どもの頃は普通に学校に通っていたから?
不登校になると将来の可能性が狭まるから?
社会から孤立して引きこもりになってしまうから?
実は、不登校と引きこもりに明確な因果関係がある(不登校になった子は引きこもりになりやすい)といったことは確認されていません。
平成22年の内閣府による調査では、下記のように説明されています。
現在の状態になったきっかけを聞いたところ、(中略)仕事や就職に関するきっかけ
によってひきこもった者が多かった。「不登校(小学校・中学校・高校)」(11.9%)や「大学にな
じめなかった」(6.8%)は、合計しても 18.7%にとどまっていた。内閣府政策統括官引用「若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)報告書」より引用
つまり、不登校がきっかけで引きこもりになるのは、全体のおよそ10%。
不登校になったことをきっかけに心境の変化があった人、不登校になって自分らしく過ごせるようになった人もたくさんいる、ということなのです。
もちろん、学校に行くからこそ得られるものもあります。
わたし自身、いろいろあったけど今は学校が好きですし、学校が居場所となる子どももたくさんいるはず。
でも、「学校に行けばすべてうまくいくのか」というと、そういうわけでもありません。
学校に行くのがゴールなわけではなく、学校に行くことはあくまでスタートなのです。
なによりも大切なのは、その子が幸せであること
きっとあなたは、我が子の幸せを願っているはず。
幸せであってほしいからこそ、不幸に思える「不登校」が受け入れられない。
だからこそ、「学校に行くことが果たして正解なのか」を今一度考えていただきたいのです。
「不登校」自体は、不幸なことではありません。
もちろん、学校に行かないということは、学校に行けなくなる要因があるということ。
その要因によっては、心に深く傷を負ってしまうこともあります。
学校に行かないことによって、体育祭などの思い出が作れなかったり、勉強が遅れやすくなったりすることも考えられます。
それでも、「学校に行かない」という幸せもあるのです。
勉強も、思い出作りも、コミュニケーションの学習も、学校以外でだって可能なのです。
我が子の幸せを願うのなら、子どもの意思を尊重してみませんか。
不登校の高校生を受け入れる学校・場所もある
例えば通信制高校や定時制高校は、さまざまな事情を持つ人が通っています。
「全日制の高校には行けない、でも高校は卒業したい」という場合には、そういった場所を検討してみると良いでしょう。
そのほかにも、サポート校やフリースクールなどもありますし、訪問型のサポート施設もあります。
通信制の大学などもありますので、全日制に通えない場合でも大学卒業まで目指すことも可能です。
時間はかかるかもしれませんが、お子さんに合う道がきっとあるはず。
少しずつでいいから、それを一緒に、探していきましょう。
- ママたちの声を集めて届けるSNSはじめました。