このページをご覧になっている方の多くは、「子どもからいじめの相談を受けた」「子どもがいじめを受けているらしいが、どうしたらいいか分からない」といった悩みを抱えていらっしゃるかと思います。
現代の日本において、いじめや不登校、自殺といったものは、とても身近な問題です。
わたしはこれまで300名以上の小中高生たちの相談に乗ってきましたが、ほとんどの子どもが「学校での居場所のなさ」「学校でのトラブル」に悩んでいました。
しかし、保護者の方にとっては、まさか自分の子どもがそうなるだなんて、想像もできないと思います。
そんな中、お子さんから突然「いじめを受けているんだ」と相談されたり、学校や先生から「お宅のお子さんがいじめを受けているようなんです」と言われたりしては、これから先どうしたらいいのか分からなくなってしまいますよね。
結果、焦って行動してお子さんとすれ違ってしまう、お互い望まない結果をうんでしまうことも珍しくありません。
なによりもまずは、正しい対処法を知ることが大切です。
子どもがいじめを受けていた!その時まずするべきことは?
一番最初にするべきなのは、「子どもが今望むことを知る」ことです。
わたしは中学生の頃にいじめから不登校になりましたが、「休みたい」というわたしの意思を伝えられず、両親は「学校に行く」方向で動いていました。
結果、わたしは無理をして身体を壊してしまい、両親はどうしたらいいか分からなくなり……。
5年以上経った今でも、わたしと両親の間には少し距離があります。
いじめを始めとした学校でのトラブル解決において重要なのは、「お子さんが安心して生活できる環境を取り戻すこと」です。
ですから、どうすればお子さんが安心できるのかを知っていく必要があるのです。
例えば、学校が既にいじめを認知していた場合を除き、いきなり学校に伝えるのはおすすめしません。
なぜなら、お子さんがそれを望まないかもしれないからです。
お子さんにとっては、「クラスメイトや学校の先生たちに、自分がいじめられていると知られる」というのは、とても勇気のいることなのです。
関係なかった子にまで自分がいじめに遭っていた事実を知られてしまうかもしれない。
「いじめを受けるような可哀そうな子」と偏見の目で見られるかもしれない。
いじめが悪化するかもしれない。
「こんなことでいじめだなんて」と笑われるかもしれない……。
子どもにとって、「いじめ被害者であることを知られる」というのは、「いじめに遭うような人間だと知られる」ということ。
もちろんゆくゆくは、学校と連携していじめを解決することも必要になるのでしょう。
でも、それは最優先でしなければいけないことではないはずです。
学校への相談以外にも、例えば「別室登校や保健室登校の提案」「勉強に関する提案」「将来についての話」などは、お子さんの様子を注意深く見ながらしていく必要があるかと思います。
もしかしたら最初は、なかなか素直な気持ちを話してくれないのかもしれません。
でもそれは、ご家族を信頼してないからではないのです。
お子さんも「自分自身がいじめを受けているという事実」「自分自身が学校に行けなくなっているという事実」に直面しています。
その事実を受け入れ、前を向くには、相当な時間を要するのです。
だから、お子さんがもし休みたいと言ったなら、じっくり待ってあげてください。
お子さんがもし学校に行けるようになりたいと言ったなら、最大限協力してあげてください。
まずはあなたが、お子さんの一番の味方でいてあげてください。
子どもと一緒にいじめを克服!親ができることって……。
「お子さんのペースで」と分かってはいても、自分の子どもが傷ついているなんて知ったら、じっとしていられませんよね。
では、家族は、わたしたち周りの大人は、お子さんを助けるために、何ができるのでしょう。
ここでは、親・家族だからこそできることを3つご紹介します。
1.子どもの話をすべて聴く
いじめというのは、孤独な闘いです。
ずっと受けていると、やがて「自分はいじめを受けるような人間なんだ」「自分の味方なんて一人もいない」という考えが生まれてしまいます。
苦しい。つらい。悲しい。許せない。逃げたい。助けてほしい。泣きたい。学校に行きたくない。明日が来るのが怖い。
いろいろな感情が渦巻く中、たった一人で耐え続けているのです。
「自分の味方がいる」と分かった時、「あなたに話しても笑われない、否定されない」と伝わった時、感情を溜め込んできた心は決壊します。
自分の子どもがどんな目に遭ってきたのか、自分の子どもがどれほど苦しんでいるのか。
それを聴くのは、しんどいと思います。
きっと、お子さんと同じくらい、もしかしたらそれ以上にご家族や保護者の方もつらい思いをするのだと思います。
代われるなら代わりたい。自分を犠牲にしてもいいから、どうにか楽にしてあげたい。
そう思うのに実際にはできるはずもなく、自分の不甲斐なさに苦しくなってしまうこともあると思います。
それでも、どうか聴いてあげてください。
もしかしたら中には、誇張された事実が含まれるかもしれません。
被害妄想が入ってしまうかもしれません。
発言に矛盾があるかもしれません。
あなたを責めるような発言が紛れ込んでいるかもしれません。
大切な誰かを傷つけるような言葉があるかもしれません。
でも、どうか最後まで聴いてあげてください。
ずっと一人で抱え込んできたんです。
味方なんて誰もいないと思っていたんです。
一筋の光が見えたら、なにがなんでもと縋り付いてしまうんです。
どうか、否定せずに、止めずに、聴いてあげてください。
2.選択肢を拡げるお手伝いをする
お子さんがひとしきり気持ちを吐き出して落ち着いてきたら、次は「どう行動するか」を考えるフェーズに入っていきます。
いじめを受けた時、学校に行くのをやめた時、その子どもの前には数えきれないほどの選択肢があります。
学校に再び行くこともひとつ。
別の学校へ移ることもひとつ。
フリースクールやサポート校、通信制の学校を検討することもひとつ。
しばらくは学校へ行かずに休養することもひとつです。
どの選択肢を選んでも、「だから不幸になる」とも「だから幸せになる」とも決められません。
どの道であっても、結局はその後の行動次第です。
でも、子どもの中には、「家族にこれ以上迷惑をかけられないから」と無理して学校に行くことを選んでしまったり、学校での体験がつらすぎて「学校」というもの自体に恐怖を感じて何もできなくなってしまったりする子どももたくさんいます。
もちろん、それもひとつの選択といえばそれまでです。
しかし、その子どもは将来、自分の人生を歩んで行けるのでしょうか。
一過性の感情が高まると、視野が狭くなり「この道を行くしかない」と考えてしまう場合もあります。
だからご家族の方には、ぜひ「選択肢を拡げる」手伝いをしていただきたいなと思います。
お子さんが現実を受け止め、未来を考えるようになってきたら、いろんな道があることを伝えてみてください。
学校や学び方には、様々な形があること。
世界には何十億という人がいて、人それぞれに違った人生があること。
何度躓いても、何度だってそこからスタートできること。
今は、たくさんの人の価値観を知れるようなワークショップやイベントも充実しています。
お子さんが、数ある選択肢のうちから自分が本気になれる道を選べるように。
お子さんと一緒に、未来がどれだけ可能性に溢れているかを見てみてください。
3.子どもの選択肢を尊重する
数々の選択肢を見たうえで、お子さんがどれかの道を選んだのなら、ぜひ尊重していただきたいと思っています。
もしかしたら、お子さんが選んだ道は、ご家族にとってはあまり選んでほしくなかった道かもしれません。
でも、その子の人生をこれから歩んでいくのはその子自身なのです。
たとえそれで失敗したとしても、苦い経験をしたとしても、「自分で選んだ」「それを家族が尊重してくれた」というのは、確実に自信につながります。
先回りして躓きそうな石ころをどけるのもひとつの愛情ですが、いざ転んだ時に手を差し伸べたり、適切な手当ての仕方を教えてあげたりすることも、立派な愛情の形ではないでしょうか。
そしてできれば、道を進むお手伝いをしてあげてください。
学校との連携や、経済的な援助。
家族にしかできない、身近な大人にしかできないことが、たくさんあります。
過度に気負う必要はありませんが、できることをひとつひとつやっていくことが、あなたや、大切なお子さんの幸せにつながっていくのだと思います。
お子さんも、家族も笑顔になるために。たった1つのしてはいけないこと
「話を聴き」「選択肢を拡げ」「選択を尊重する」。
この3ステップが、わたしなりの「いじめで悩む子どもに対し、親や大人ができること」です。
とはいえ、悩む子どもが100人いれば100通りの解決策がありますから、すべてがこれに当てはまるということではありません。
大切なのは「子どもの味方」である大人が身の回りにいることでしょうし、ここに書いていないことでも「子どものため」を思っての行動であればきっとその気持ちはお子さんに伝わります。
でも、子どもの悩みに向き合う際に、たった1つだけ「絶対にしてはいけないこと」があります。
一人で、家族だけで抱え込んでしまうことです。
あなたの周りには、たくさんの味方がいます。
学校に信頼できる先生がいるのなら、ぜひ相談してみてください。
学校以外の公的機関を頼るのもひとつの手です。
子どものために、そのご家族や関係する方のために取り組んでいる団体はたくさんあります。
悩みを解決する過程は、試行錯誤の連続です。
うまくいくことがあれば、当然うまくいかないこともあります。
そんな時、一人で抱え込んでいると、自己嫌悪や自責の念にとらわれやすくなってしまうのです。
味方が一人でも二人でもいれば、そういった気持ちを軽減できるかもしれません。
お子さんだけでなく、そのご家族や周りにいる方も一緒に笑顔になるために、それがなによりも大切なのです。
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