この記事では子どもが不登校になってしまう原因や、不登校を克服するまでの4段階について解説いたします。
不登校のお子さんのことで悩まれている保護者の方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
不登校とは
そもそも不登校とはどう定義されているのでしょうか。文部科学省によると、不登校とは「年間30日以上欠席した児童生徒のうち病気を経済的理由を除き、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的背景により、児童が生徒が投稿しないあるいはしたいくともできない状況にあるもの」と定義されています。
少しややこしいので大雑把に言うと「病気や経済的理由以外で、学校を年間30日以上休んでいる生徒」のことを指すようです。学校の登校が年間35週程なので、週1日の欠席あるいは月3日の欠席で不登校に該当します。
不登校生の数と推移
文部科学省の調査結果によると、平成28年度(2016年度)の時点でおおよそ小学生3万人、中学生10万人、高校生5万人の不登校生が存在しているとのことです。
また、不登校生の割合は年を追うごとに増加傾向にあります。
不登校の原因について
中央教育審議会の資料によると、不登校の原因は「学校に関わる状況」「家庭に関わる状況」「本人に関わる状況」の3つに大別され、そこからさらに細かく別れています。
- ①学校に関わる状況
-
・いじめ
・いじめを除く友人関係をめぐる問題
・教職員との関係をめぐる問題
・学業の不振
・進路にかかる不安
・クラブ活動、部活動等への不適応
・学校のきまり等をめぐる問題
・入学、転編入学、進級時の不適応
- ②家庭に関わる状況
-
・家庭の生活環境の急激な変化
・親子関係をめぐる問題
・家庭内の不和
- ③本人に関わる状況
-
・病気による欠席
・あそび
・非行
・無気力
・不安など情緒的混乱
・意図的な拒否
このように不登校にはさまざまな原因があります。
この中でも主な原因となっているのは下記の5つです。
- 不安など情緒的混乱(19.65%)
- 無気力(18.47%)
- いじめを除く友人関係(10.69%)
- 親子関係をめぐる関係(7.87%)
- 学業の不振(6.43%)
上位3つの原因だけで全体の約半分を締めており、上位5つの原因を足すと全体の60%を超える割合になっています。意外なのは、いじめや非行は不登校の主な原因には入っていないことです。
原因のわからない不登校
多くの親御さんが抱えている問題に「原因のわからない不登校」というものが存在します。
仲の良い友達もいる、いじめられているわけなでもない、成績も決して悪くない、先生と問題を起こしたり、非行に走るわけてもない。それでもなぜか学校に行かないというタイプです。
「原因を明らかにして、適切な対応をすれば治る」と考えるのが普通ですが、そもそもの原因がわからない。そう悩まれる保護者の方が実に多く存在します。
なぜ原因が分からないかというと、たいていの場合において不登校の原因は複合的なものだからです。
学校、人間関係、勉強、部活、家庭、そういった複数の要素が複雑に絡み合い結果として不登校になっているため、当事者である子ども自身も「なぜ自分が学校に行けないのか」が分からないことがよくあります。
不登校になりやすい子の特徴
不登校になりやすい子の特徴というものは確かにあります。しかし、この分類自体にあまり意味はないと私たちは思っています。その理由は後ほど説明しますが、まずは4つの大きな特徴を見てみましょう。
①傷つきやすい
些細なことに傷ついてしまうタイプです。他の人から見ると些細なことでも「イヤ」な気持ちが溜まってしまい、その結果として行動が取れなくなってしまいます。
②気が弱い
こちらは対人関係での弱さです。相手や周りのに言いたいことがあるけれど、口にできない。感情や気持ちを言葉できず、結果としてストレスを溜め込んでしまいます。
③プライドが高い
プライドが高い場合もあります。プライドが高く、自分へ要求水準が高くなります。例えば、他の人ができて自分ができないことがあるとひどく傷ついてしまいます。そして、出来ない自分を友達や親に見せたくなく、自分自身でも認めたくないとなってしまい、そういう環境から離れようとしてしまいます。
④完璧主義
完璧主義なタイプもいます。「完璧にできない限り失敗」と考えてしまい。他の人から見れば十分やっているのに、自分自身を認めてあげることが出来ません。80~90点が何回続いても、100点が取れない限り「失敗ばかりしている」と思っていまいます。
4つの特徴の共通点とは
一見するとバラバラに見える4つの特徴ですが、実はこの4つの特徴には共通点があります。
それは「自分に意識が向かっている」ということです。言い換えると「自分が周りの人からどう見られているか気にし過ぎる」ということです。
他者からの視点を気にすることは、人であれば当然持ち合わせている感覚でもあります。ただし、程度が行き過ぎてしまうと自分を苦しめるものになってしまいます。
他の人から見て自分はどう映っているか、そういった他者から見た自分を意識し過ぎることによって、思ったことを口に出せなかったり、理想と現実との乖離に傷ついてしまったりするのです。
とはいえ、人は誰しも成長の過程で「他人からどう見られているか」という気持ちと何とか折り合いをつけていくものです。不登校になりやすい子は、ただ他の子よりに強めに反応してしまっただけなのです。
その特徴は子どもの個性でもある
物事には2面性があります。プラスでもマイナスでも極端に寄ったものは、反対の性質を帯びます。例えば先ほどの特徴は、次の様に言い換えることが出来ます。
-
傷つきやすい⇆感受性が高い
プライドが高い⇆自尊心が高い
完璧主義⇆物事をしっかり遂行しようとする
気が弱い⇆他者の気持ちに配慮する
いかがでしょうか。左側だとネガティブな感じがしますが、右側だとすごくポジティブな感じがしませんか? むしろ、大人として子供に是非持ち合わせて欲しい性格です。
そう考えると、自分の子どもに何か不都合な性格や特徴があったわけではなく学校生活や集団生活に適さなかっただけという見方もできます。
お子さんの性格の中で学校や集団生活に合わなかった部分に注目して、ネガティブに特徴を見ることもできます。しかしその一方、結局は相性の問題だと割り切って良い面に目を向けることもできるのです。
大切なのは原因に振り回されないこと
私たち大人は「物事には理由がある」と信じています。しかし、こと不登校の原因には関してはあまり理由に振り回され過ぎない方がいいと考えています。
既に触れた様に、不登校の原因は複合的な要素から成り立っています。当の本人ですら、原因や理由をわかっていない場合が多々あります。明らかな外傷事件やいじめには毅然した態度で対応する必要がありますが、そうでない場合は理由にこだわり過ぎず子どもの現状を真っ直ぐ見てあげて下さい。
現状を受け入れ、子供のエネルギーがたまるのをじっくり待つことが何よりも大切です。
不登校克服までの4段階と子どもへの接し方
不登校生の保護者からよくある質問として「子供が不登校になってしまったが、ゆっくり見守った方がいいのか?それとも何か刺激を与えた方がいいのか?」というものがあります。
この質問に対する回答は「お子さんの不登校の段階次第」ということになります。
不登校克服までには下記の4段階があり、段階ごとに必要な対応が変わってきます。
- 初期
- 本格期
- 安定期
- 始動期
ここからは不登校克服までの4段階と子どもへの接し方について説明していきます。
①初期
不登校の初期は、学校に行くことが億劫になってくる時期です。行き渋り期と言ったりもします。朝起きるのを拒みはじめたり、朝だけ体調が悪くなったりします。学校は時々休んだりしますが、一応学校には通っている段階です。
- チェックリスト
-
下記いずれかに当てはまる場合はこの段階の可能性があります。
- 朝起きるのを極端に拒否する
- 朝だけ体調不良を訴える
- 不安に襲われている様子がある
この段階の子どもの心理
学校にたいしてネガティブが感情が芽生えています。理由のわかっている具体的な悩みがあるにせよ、本人にもわからない無意識的な悩みがあるにせよ、子どもは自分の辛い気持ちをわかってくれる「共感」を求めています。
この段階の子どもへの接し方
子どもに辛い気持ちの理由を聞いてみて、話してくれれば、共感しつつ解決に向けて協力するという気持ちを伝えてあげて下さい。そして、本人が了承してくれた場合には具体的な行動に移して下さい。
もし本人が理由を言ってくれない(もしくは当人も分かっていない)場合は、気持ちに共感しつつ一旦休息を与えて下さい。「学校休んでいいよ」という一言だけでも救われる子どもが大勢います。
この段階で親が何よりも気をつけないといけないのは、子どもを無理に学校に行かせようとしてしまうことです。
不登校になったらどうしようという不安や焦りがあるのは分かりますが、この時期に無理をさせてしまうとかえって状況を悪化させてしまいます。
②本格期
不登校の本格期は、本格的に学校へ行けなくなる時期です。学校にはほとんど(或いは全く)行かなくなり、昼夜逆転の生活になり、ネットやテレビゲームに没頭します。端から見るとかなり荒れた生活に見えます。
- チェックリスト
-
下記いずれかに当てはまる場合はこの段階の可能性があります。
- 学校にほどんど、或いは全く行かない
- 昼夜逆転の生活になっている
- ネットやテレビゲームに没頭する
- 生活習慣が乱れている
この段階の子どもの心理
この時期は子どもにとって最も精神的に苦しい時期です。「みんなと同じ様にしたいけどできない自分」に多くの子どもが苦しみます。その罪悪感から逃れるために、昼夜逆転して朝を逃れようとしたり、ネットやゲームに没頭して現実を見ない様にします。
この段階の子どもへの接し方
「みんなと違う自分」が辛さの源泉なのであれば、「こんな自分でも受け入れてもらえる」「人は人、自分は自分」と思える環境を与えてあげることで、そもそもの悩みがなくなり、より早く元気を回復させることができます。
そのため、子どもの現状を受け入れて、好きなことに好きなだけ没頭させてあげることが大切です。
保護者としてもこの段階が一番辛い時期になります。子どもの心身と将来の不安に加え、学校への対応、夫婦間の教育観のギャップなど、色々な問題が噴出し、精神的に疲労してしまうことの多い時期です。
この段階で親が何よりも気をつけないといけないのは、子どもにたいして言葉上では「休んでいいよ」などと言いつつも本心では「学校に行ってほしい」と思いながら接してしまうことです。子どもはそれを敏感に察知してしまいます。
この時期は、お互いのために、親子の距離を少し置いた方がいいです。良い意味で放任主義になり、軽い挨拶や食事の提供程度に関係を留め、その他は本人が求めない限り好きにさせてあげて下さい。
③安定期
不登校の安定期は、少しエネルギーが充電でき始めた時期です。本格期でやりたいことは一通りやったので退屈や暇を感じ始めます。
- チェックリスト
- 会話は問題なくできる様に変化した
- 暇や退屈を訴え始める
- 意識が内から少し外に向かい始める
- 外の人と繋がることには躊躇する
下記いずれかに当てはまる場合はこの段階の可能性があります。
この段階の子どもの心理
元気を取り戻しつつあることと退屈さによって意識が外に向かい始めます。しかし同時に外の世界に対する恐怖もあり、やや不安定でもあります。
この段階の子どもへの接し方
意識が外に向いているので、きっかけを与えるには良い時期です。ただ、実際に行動に移すには少し早いです、会話の中から興味関心を聞き出して、情報を与える程度で十分です。決して無理はさせないで下さい。
この時期になると保護者も不登校の現実を受け入れており、ある程度は見守り体制に入っていると思います。会話すらできなかった子どもと話ができるようになったり、意識が少し外に向いてきたりと、安心材料が増えていく時期でもあります。
ただし、油断は禁物です。この時期に頑張り過ぎたり社会復帰を焦ってしまうと、無理がたたってまた前の段階に戻ってしまうこともあります。はやる気持ちを抑え、じっくりいきましょう。
④始動期
不登校の始動期は、実際に外部の人と繋がり始める時期です。フリースクール、塾、習い事などに通い始めたり、学校には通えないものの保健室登校ならできたりする時期です。
- チェックリスト
- 外の世界と繋がるために実際に行動ができる
- 自分から「〇〇したい」と意見を言う
- 保健室登校や特定の授業なら参加でき
下記いずれかに当てはまる場合はこの段階の可能性があります。
この段階の子どもの心理
外に意識が向くだけでなく、実際に行動するまで回復しています。きっかけさえあれば、何かやってみたいと思っています。
この段階の子どもへの接し方
ここまでくれば、あと一歩です。本人の思いを実現できる様に、支援・サポートしてあげて下さい。
活動を始めてもすぐに軌道に乗るとは限りません。再び休むことを恐れず、1日でも動けたら褒めてあげて下さい。少しずつ生活を慣らしていけば、この後、活動期という本格的な行動フェーズに移行していきます。
各段階の対応まとめ
はじめにあった「不登校になった子どもを、ゆっくり見守った方がいいのか?それとも何か刺激を与えた方がいいのか?」にという質問に改めて答えてみましょう。
- 対応まとめ
-
①初期〜②本格期:ゆっくり見守る
親が学校へ行かないことに理解を示して、本人が安心して休養できるようにしてあげることが大切。無理に登校させたり理由を聞いたりしないようにする。
③安定期〜④始動期:少し刺激を与える
学校復帰に向けて本人と話し合いもできるようになるが、本人の自主性を一番に考え、親は復帰を焦らずに本人が望むサポートに徹する。
不登校のその後
不登校になった子ども達も、いずれ何らかの社会へ出て行きます。長く細く、かつては出口が見えなかった道もいつかその終わりを迎えます。その後の道は様々です。しかし、いくつかのパターンもあります。
ここからは義務教育後の進路についていくつかのパターンを紹介していきます。
①復学するパターン
元の学校に再び通うにしても、転校するにしても文部科学省に認められた高校に通うパターンです。
◆全日制高校
以前は不登校の生徒を避ける傾向もありましたが、現在は少子化による生徒数の減少などもあり、入学に関して寛容になってきた印象があります。しかし、内申書など学力状況によって合格水準に達してないと判断される場合もあります。高校によって仕組みや事情が異なるので、子どもが復学の意志を示したらなるべく早く情報収集する必要があります。
◆定時制高校
全日制の高校に比べて1単位の時間や授業時間が短く設定されています。夜間のイメージを持たれているかたもいますが、日中の定時制も存在します。定時制の場合4年間での卒業を基本としていますが、授業数を増やすなど工夫することで3年間で卒業することも可能です。個々の事情に合わせたしてくれるところもあるので、自分のペースで学校生活を送ることが期待できます。
◆通信制の高校
通信制の高校は全日制の高校と異なり「単位制」が施行されています。なので学年という概念がなく、当然留年も存在しません。必要な在籍期間と単位を取得すれば卒業できるシステムになっています。高校を退学した場合、過去に在籍した学校での単位が認められることもあります。学校に出席することはほとんどないので、他の人と直接交わることに恐怖を感じている場合は良い選択肢かもしれません。
②復学はしないが、進学を目指すパターン
学校に復学はしないけれども、専門学校や大学進学も目指すパターンです。
◆高等学校卒業程度認定試験に合格する
高等学校卒業程度認定試験(以下「高認」という)に合格することで、高校に通えなくとも大学受験や専門学校進学の切符を手にすることができます。詳しくは文部科学省の公表する実施概要を熟読する必要がありますが、自分で学ぶことが苦でなければ独学で合格することは十分可能です。
◆サポート校
いわゆる無認可の学校なので通うだけでは高卒の資格を得られません。しかし、学校法人や予備校が運営しており、高認対策から大学入試まで幅広くサポートしてくれます。何から勉強すればいいかわからない、一人じゃ手につかない、などの場合はサポート校の力を借りると良いです。まずは高認に合格し、それから大学入試を目指す流れになります。
◆専門学校
通常、専門学校に行くには高卒の資格が必要ですが、中卒で入学できる学校もあります。是非一度探してみて下さい。行きたい専門学校に高卒資格が必要な場合、高認の合格を目指しましょう。
③勉強ではなく、他の人々と交わるパターン
勉強をするにはどうしてもエネルギーが必要です。その前段階として外で家族以外の人と交わるパターンもあります。ここをステップとして各種学校へ進学することもあります。
◆フリースクール
サポート校よりさらに間口が広く、通常の勉強以外の活動も行うところがほとんどです。スクールごとに特色が大きく異なり、場所によっては強い理念を打ち出しているところもあります。お子さんとマッチするかどうか、実際に足を運んでみてみましょう。全力で勉強したい子には不向きかもしれませんが、精神的エネルギー回復しつつ社会と接点を持つには、概ね良い環境です。
◆フリースペース
現在のところフリースクールと明確な違いはなく、不登校生を受け入れる場所としては同じです。フリースクールよりもやや間口が広い印象もありますが、一般に名称が認知されていないのも事実です。
④働く(就職する/起業する)パターン
子どもによっては進学せずに「働く!」というパターンです。しかし、直ぐに鵜呑みにはしないほうがいいかもしれません。学校に戻る不安や自信のなさからそう言っている場合も少なからずあるためです。
冷静に考えれば、働くほうが学校よりも厳しい環境に身を置くことになり、進学したほうがその後の選択肢は確実に増えます。仮に本気で就労するつもりであれば、対人的なエネルギーは十分戻っているはずです。
とはいえ、人は実際に経験しないと分からないのも事実です。もしお子さんが頑なに進学を拒み働くことを希望されているのであれば、一度挑戦させて様子を見守るという選択肢もありだと思います。親としては心配が尽きませんが、意外な能力が眠っているかもしれません。
- 不登校その後のまとめ
- 不登校のその後の選択肢は復学だけではありません。高校に行かなくても大学や専門学校に進学もできますし、その前段階としてフリースクール、さらに働くという選択肢もあります。いずれの場合も大事なのは本人の意志です。決して強制する事なく、納得した上での選択肢を選んで下さい。
おわりに
以上、この記事では子どもが不登校になってしまう原因や、不登校を克服するまでの4段階について解説いたしました。
不登校のお子さんのことで悩まれている保護者の方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
- ママたちの声を集めて届けるSNSはじめました。