「学校に行ってほしい……」不登校の子どもにどう接すれば?気持ちと向き合う3ステップ

子どもから「学校に行きたくない」と言われた時。
子どもが不登校になった時。

「つらい思いはしてほしくない」
と思う一方で、「このまま社会から孤立してしまわないか不安」「高校卒業はできるのか?」「やっぱり学校には行ってほしい……」と葛藤する親御さんも多いのではないでしょうか。

きっと、さまざまな不安や悩みがあると思います。

そこで今回は、「学校に行ってほしい」という感情との向き合い方を、考えてみます。

目次
1.なぜ、「学校に行ってほしい」と思うのか
2.「学校に行ってほしい」感情との向き合う3ステップ
3.本当に学校に行かなくても大丈夫なの?

なぜ、「学校に行ってほしい」と思うのか

気持ちとの向き合い方を考える前に、まず、なぜ学校に行ってほしいと思うのかを考えてみましょう。

主には、以下のような理由があると思います。

1. 進路・将来が不安

学校に行かなくなると、もちろん欠席日数は増えますし、宿題やテストなども取り組めない・参考程度の評価しか得られなくなるため、成績が低くなりやすくなります。

進学に不利にならないか、就職できないのではないか……。
そんな将来への不安から、不登校を受け入れられなくなってしまうのです。

2. 社会から孤立して引きこもりにならないか心配

「不登校になると、そのまま社会から孤立して引きこもりになってしまうのではないか」
という不安を持っている方も多いかと思います。

実際に、不登校になると社会と関わる機会が減りますし、特に人間関係のトラブルから不登校になった場合には人を遠ざけることが多いようです。

3. 日中に独りにしてしまう

シングルマザー・片親家庭や、共働き家庭の場合、お子さんは日中独りで家にいることになります。
小学生などまだ幼い場合や、発達障害や疾患など、本人の性格・特性・状況などによっては、子どもを独りにさせられないご家庭もあります。

そういった不安・事情から、不登校を受け入れられず、学校に行かせようとしてしまうのです。

4. 世間体・体裁が気になる

まだまだ日本では、「不登校」がネガティブなものとして扱われています。

特に地域のコミュニケーションが活発な場合は、噂がすぐに広がるのも珍しくありません。
結果として、その地域で生きにくくなったり、親も「しつけ方が悪い」などと非難されたりする可能性もあります。

そんな噂・非難の目を避けようとするあまり、子どもの気持ちを受け止められなくなってしまうのです。

5. せっかく入学したのに/通ったのにもったいない

中高一貫校や私立の学校の場合、学費が高額になりますし、受験までの準備も時間がかかります。

そうした面から、「せっかく入学したのに……」と、不登校をもったいないものとして扱ってしまうのです。

他にも、卒業まであと数か月、最上級生になって、というタイミングだと「せっかくここまで通ったのに…‥」と、同じような思考になることが多いようです。

「学校に行く」のは普通のことで、「不登校」は特別?

学校に行ってほしいと思う心情はさまざまかと思いますが、共通していることが1つあります。

それは、「学校に行ったほうがいい」と思っていることです。
学校に行ったほうがいいと思うから、学校に行くことを薦めるのですよね。

しかし、果たして本当にそうなのでしょうか。

いま、全国には約13万人の不登校生がいます。
中学生は、およそ30~40人に1人で、クラスに1人はいる割合です。

少し前まで、不登校は異質なものとして扱われていました。
世間の理解が及ばないために、不登校生・学校に行けない子どもは「問題児」「落第生」とされていたのです。

しかし、著名人がいじめ体験や不登校経験を告白したり、不登校支援に取り組む団体ができたりと、少しずつ「不登校を受け入れ、その子に合わせたサポートをしていこう」という流れができてきました。

不登校は特別なことではなく、選択肢の1つなのです。
学校に行くのがいい、不登校がダメということではなく、お子さんに合った選択をすることが、なによりも重要なんですよ。

「学校に行ってほしい」感情と向き合う3ステップ

とはいえ、いきなり「じゃあ学校には行かなくていいよ!」とはならないと思います。

今回は、「学校に行ってほしい」という気持ちと向き合う方法を3つのステップにまとめました。
少しずつ気持ちと向き合い、お子さんとどう接していけばいいのかを考えていきましょう。

Step1. 「なぜ行ってほしいのか?」を明らかにする

まずは、上記の内容を参考にしながら、「学校に行ってほしいと思う理由」を考えてみてください。

学力面の不安? 家庭の事情? 周りからの声?
いろいろあると思います。

理由が分かったら、次に「それは学校でしか達成できないものなのか」「それは子どもの人生において“学校で感じている苦しみ”よりも優先されるべきものなのか」を考えてみてほしいんです。

もし学校でしか達成できない、子どもの人生においてなにより優先されるべきことだと考えるのなら、お子さんとよく話し合ってください。
きちんと説明して、それがお子さんも納得できる内容なのであれば、お子さんは学校に戻ろうとすると思いますよ。

Step2. 不登校などに関する知識を深める

昔、「分からないもの」「未知のもの」は危険であり、命を脅かす可能性がありました。
だから、人は本能的に、「分からないもの」に対して恐怖心を覚え、拒絶しようとするのです。

不登校も、それと同じ。
学校に行くことが当たり前の世の中で「不登校」はあまりに特異な存在だったのです。
保護者の方々が子どもの頃には、不登校なんて言葉もなかったのではないでようか?

まず大切なのは、その「分からないゆえの抵抗感・拒絶感」を無くすことです。

不登校になった人たちは、その後どんな人生を歩んでいるのか。
不登校になると、具体的にどのようなデメリット・メリットがあるのか。
不登校に対して、世間はどんなイメージを持っているのか。

そういったものを1つひとつ知っていくことが、「学校に行きたくない」「学校に行けない」というお子さんの苦しみを理解するきっかけとなるのです。


Step3.  子どもと話をする時間を作ってみる

不登校に関する知識を得たあとは、いよいよ本題です。
時間を作って、「なぜ行きたくないのか」「今後どうしたいのか」「今、何を求めているのか」といったことをお子さんとよく話してみてください。

その時、絶対にお子さんの意見を否定してはいけません。
親としては「それはどうなの?」とか「そんなことできるわけない」と感じるようなものもあるかもしれません。
そうだとしても、その意見は、お子さんが精一杯苦しんで、考えて、悩んだ末に出したものなのです。
そしてそれは、お子さんにとって、核とも呼べるような、とても心の深いところにあるものです。

それを、自分の親から否定されたら。
なにより傷つくし、今後自分の意見を伝えることも怖くなってしまいます。

だから最初はぐっとこらえて、とにかく話を聞いてみてください。

実際に話をしてみたら、「学校に行ってほしい」という気持ちに変化があるかもしれません。
もしなかったとしても、お子さんに、学校に行ってほしいと思っていることや、その理由を伝えてみたら、何かが少し、変わるのではないでしょうか。

本当に学校に行かなくても大丈夫なの?

わたしは中学生の時に不登校を経験して、一時は家族関係も悪くなり、ほとんど人との繋がり・社会との繋がりを遮断していました。

そんなわたしだから言います。

学校に行かなくても大丈夫です。

もちろん、学校に行かないことによるデメリットはあります。
しかし、無理に学校に行くという選択をしていたら、今のように好きなことを仕事にして、信頼できる人たちがいて、という生活は送られなかっただろうな、と思うのです。

学校を途中で辞めても無駄にはならない

学校を途中で辞めたり、転校したり、行かなくなったりしても、それまでの経験がすべて無駄になる、ということはありません。

わたしは、学校に行かなくなったことで、夢を見つけました。
その夢があったからこそ、今、ここで、こうしてあなたに宛てた記事を書いています。

人生において、「無駄な瞬間」なんてものはないのです。
学校を途中で辞めても、それまでに得た知識は残るし、元クラスメイトたちとの交流を続ける方もいます。

「もったいない」なんてことはありません。
むしろ、行きたくない学校に行き続けることのほうが、逃れられる苦しみに耐え続けるほうが、「もったいない」ことだと思いませんか?

不登校から引きこもりになる人は多くない

不登校になるとそのまま引きこもりになるのではないか、という不安を抱えている方もいらっしゃるかと思います。

しかし、平成22年の内閣府による調査では、引きこもりになった人のうち、小中高校の不登校が原因だと答えた人は11.9%。
大学に馴染めなかった人を合わしても、全体の18.7%にとどまりました。

参考:若者の意識に関する調査(ひきこもりに関する実態調査)報告書|内閣府政策統括官

不登校になる時は心身ともに限界を迎えていることも少なくないので、直後は引きこもりになったり、人との関わりを拒絶したりする人もいます。
しかし多くの不登校生が、段階を経て、少しずつ外界への興味を持ち、人と関わるようになるのです。

不登校になったことによって、かえって心身が楽になり、ストレスフリーな生活を送れるようになる人もいます。

学校に行かなくても進学・就職はできる

多くの方が不安に思う進学・就職ですが、不登校になっても諦める必要はありません。

授業を受けていないので学校の成績はどうしても低い傾向がありますが、成績をあつかわない受験方式などもあります。
学習は、学校以外にも学習塾や家庭教師、フリースクールなどでおこなうことが可能です。

公立の小中学校は出席日数がどれだけ少なくても卒業は可能ですし、高校は卒業しなくても、高校卒業程度認定試験に合格すれば、大学・専門学校などの受験資格が得られます。

もちろんある程度の努力は必要ですが、決して「学校に行かない=進学・就職できない」ということはないのです。

さいごに

ここまで書きましたが、「学校に行ってほしい」と思う保護者の方の気持ちも分かります。

わたしが不登校になった時、両親はありとあらゆる手を尽くして、学校に連れて行こうとしました。

「先生と面談するだけでもいいから」
その先生は、わたしにとっては信頼の置けない、怖い存在でした。

「体調悪くなったら帰ってきていいから」
早退する時に目立つのが嫌で、お腹が痛くても頭が痛くても朦朧としても、わたしは帰りたいと言えませんでした。

学校に行くことで得られるものは、たくさんあります。
素晴らしい学習環境。知識の豊富な先生。切磋琢磨し合える同年代の仲間たち。その瞬間にしか得られない思い出たち。

「学校に行っていたら、もう少し変わっていたのかな」
と考える夜もあります。

しかし、当時のわたしにとっては、学校は恐怖の対象でしかなく、つらく苦しい場所でした。

「休んでいいよ」
父からそう言われた時、わたしはやっと安心できたのです。

たった一言。

「学校には行かなくてもいいよ」
そうあなたが伝えるだけで、お子さんは今の何百倍も、安心して、楽になるのです。

いろいろと考えるところがあるのも分かりますが、今後のことは一旦忘れて、まずはお子さんを楽にしてあげませんか。
やっぱり学校に行ったほうがいいと思ったら、復学・学校復帰することも可能です。

まずは休んで、エネルギーを蓄えてから、今後のことを親子で一緒に考えてきましょう。

その結果の選択が学校に行くことでも、それ以外の道でも、いつでもご相談に乗ります。
一人じゃありません。
一緒に、取り組んでいきましょうね。

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