不登校になった時、「自分・子どもがどのくらいで学校に戻れるのか」「いつまでこのつらい状況が続くのか」といったことを考える方は多いですよね。
そこで今回は、不登校から回復するまでの期間について記事にしました。
不登校の“回復”とは何か
そもそも、「不登校から回復する」「不登校を克服する」とは、どの状態のことを指すのでしょうか。
復学や学校復帰?
社会復帰したら?
例え否定的に考えていなくても、家にこもっていたら回復していない?
きっと、それぞれの生育環境や価値観によって、さまざまな答えがあると思います。
不登校のゴールは「復学」じゃない
不登校からの回復というと、多くの方が「学校に戻る」ことをイメージされると思います。
実際、相談に来る方の多くは(親も子も)「学校に戻せばいいと思った」「成績が不安なので学校に行ったほうがいいと思う」と言います。 しかしわたしは、「復学」をゴールとして置くべきではない、と考えます。
もちろん、学校に通うことを否定するつもりはありません。
学校は、相性の良い人にとっては素晴らしい環境ですし、いろいろな人と出会うきっかけも作れます。
そうではなく、大切なのはその先にあるものだ、ということ。
そもそも、なぜ学校に戻ったほうがいいと考えるのでしょうか。
勉強をしないといけないから?
家庭教師や通信講座のような学び方もあります。
社会から孤立するから?
ボランティア活動やアルバイトでは不十分でしょうか。
将来が不安?
高認を取ったり通信制大学を卒業したり、あなたの夢を叶える方法は復学以外にもたくさんあるはず。
不登校のゴールは、「復学」ではないのです。
復学することによって、何かを得ることが、重要なのです。
そして、それを得る方法は、他にもあるし、復学したからすべてを得られるというわけではありません。
あなたは、この先どう生きていきたいのか
一度、立ち止まって考えてみてください。
あなたはどう生きたいですか?
どんな人生を歩みたいですか?
将来どんなことを叶えたいですか?
職業や仕事でも、プライベートでも、他のことでもかまいません。
それを考えた上で、「じゃあ、それを達成するにはどうしたらいいんだろう」と考えてみてください。
結果、「復学して学校で学びを深めたい」と思ったら、復学に向かって歩きだせばいいのです。
不登校からの回復=自分の居場所を見つけること
今回の記事では、「不登校からの回復」は、自分の居場所を見つけることを指したいと思います。
復学でも、アルバイトなど社会参加でも、ボランティア活動でも。
家の中にいるままでだっていい。
あなたが自分らしく在れる場所があるなら、あなたが一息つける場所があるなら、あなたはもう「回復」しているし「克服」できているのです。
不登校を克服するまでの期間
それを踏まえて、不登校を克服するまでの期間は、一般的に「3か月~1年程度」と言われています。
もちろんそれより短い人はたくさんいますし、長くかかる人もいます。
子どもが置かれている環境や、悩み、考え方、周りの人の姿勢、今の状況……。
いろいろなものが複雑に絡み合いますから、仮に1年で回復しなかったとしても、気に病む必要はありません。
不登校が短く終わるケース
不登校期間が短いものには、下記のようなものがあります。
1.原因がハッキリしていてかつ解決しやすい
例えば、「いじめがつらくて学校に行けない」という子の場合、いじめてくる子たちと環境を分けたり、先生や親がしっかり対応してくれると感じられれば(=いじめによる問題が解決できれば)学校に戻ることが可能です。
このように、原因がハッキリしていて、かつ解決が可能なものの場合は、比較的不登校期間は短くなります。
2.子ども自身の意志力が強い
子ども自身が「また学校に行きたい」「わたしはホームスクーリングがいい」といったような意志を持っている場合も、不登校で悩む期間は短くなります。
この場合には、子ども自身というよりも、その考えを受け入れられなかったり、子どもの変化に戸惑ったりして、親御さんが悩まれることが多いようです。
期間が短い=早く回復した、とは限らない
先述したように、不登校は「学校に戻ったらおしまい」というものではありません。
学校に行けなくなるのは、表面化している問題の1つに過ぎないのです。
学校に行けても、それが「親・先生からのプレッシャーに耐えきれないから」「家に居場所がないから」「将来が不安だから」といった理由では、不登校が解決したとは言えません。
すぐにまた何かしらの問題が発生してしまいますから、「不登校の期間を終わらせる」ことに執心せず、根本的な部分から見直すようにしてくださいね。
不登校からの回復に時間がかかる理由
1.「今、つらい」ではなく「ずっとつらかった」だから
不登校というと、「その時につらくなった」とイメージされやすいのですが、実際にはそうではありません。
ずっとつらい気持ちを抱えたまま、長い間独りで耐え続けて、それでも耐えきれなくなった結果が「不登校」。
長い間つらい気持ちを抱えていた分、回復に時間がかかるのは当然の事なのです。
2.周りからの理解を得づらい
少しずつ、不登校やフリースクールについての理解が広まってきたとは言え、まだまだ世間的には「学校に行くのが普通、学校に行かないのは特別な理由がある」という意見が大多数です。
周りからの理解が得づらいと、それだけでも孤独になりやすいもの。
「自分が間違っているのではないか」「自分は甘えているだけだ」といったよに考えて、自分を追い詰めてしまう方は少なくありません。
3.今後の生き方を考えるきっかけになる
不登校はネガティブに捉えられがちですが、ポジティブな面も持ち合わせています。
不登校になると、学校に行っている時と比べて格段に自由な時間が増えます。
そしてその多くは、一人で、あるいは少人数で過ごしますよね。
一人でいる時間が長くなると、「どうして人は生きるのだろう?」「私は今後どうしていけばいいのだろう?」と考えるようになるのです。
そういった、人生について、自分についての考えを巡らすことも、不登校期間が長くなる1つの理由です。
4.「また失敗する」という恐怖
不登校は、1つの大きな挫折経験です。
特にいじめなど人間関係のトラブルや、成績不振のような”自分にも原因があるのではないか”と思えてしまうものが関係している場合、「どうせ、また失敗する」と考えやすくなります。
その恐怖を克服できるまでは、完全に不登校を克服することは難しいでしょう。
不登校の克服には段階がある
不登校と一言で言っても、子どもによって精神状態や考え方、希望は違います。
必要な支援も、千差万別。
私が代表を務めるフリースクールでは、不登校を「初期・本格期・安定期(回復期)・始動期」の4つの段階に分け、子どもたちにとってどの支援が必要なのかを考えています。
それぞれの段階の特徴
詳しく紹介している記事もありますので、ここでは簡単にそれぞれの特徴について解説します。
初期
行き渋りが始める頃~不登校になる直前・直後がこれに当たります。
学校は時々休むけれど通っている、好きなことをしている時は元気、といった状態です。
この時期の特徴としては、「これまでできていたことができなくなる」「1日の中で態度が大きく異なる」などがあります。
例えば、朝起きられなくなったり、テストの点数が下がったり。
朝は体調不良を訴えるのに、学校を休むことが決まったら元気になる。
昼間は元気になるのに夜は眠れないと泣いている。
そんな、一見“怠け”ともとれてしまうような行動は、子どもが苦しんでいるサインかもしれません。
本格期
不登校になったばかりの頃ですね。
心身共に疲弊しきっていて、学校に行かなくなり(あるいは学校を休む日数が増え)、不安定な日々が続きます。
この時期の大きな特徴は「現実逃避」。
子どもによって行動はさまざまですが、昼夜逆転になったり、ネット・ゲーム・スマホ等に熱中したりする子どもが多いようです。
またこの時期は周りの人の感情や反応に対して敏感になり、不安定になりやすいため注意が必要です。
安定期(回復期)
不登校になってしばらく経った頃で、少しずつ心も身体も元気になり始めた段階を指します。
この時期の特徴は、「家庭内での様子が安定する」「周りに興味を持ち始める」などです。
会話は問題なくできるようになり、以前好きだったものなどに興味を持つようになります。
ただ、まだ外の人と繋がったり、実際にチャレンジしたりすることには躊躇するため、焦らずに見守ることが大切です。
「元気になってくれた!」と期待しすぎず、“リハビリ中”くらいの意識でいると良いでしょう。
始動期
不登校になってからさらに経った頃~不登校が終わるまでの期間を指します。
この時期になると、学校復帰や社会参加など、子ども自身の興味関心・目標に合わせて行動できるようになります。
特徴としては、「自分の考えを表明できる」「実際に行動できる」などがあります。
学校に戻る場合は、保健室登校や別室登校などを通して少しずつ環境に馴染めるようになります。
誰かと話したり、新しい場所に出かけたり、「外」と繋がることに対しての恐怖心・怯えがなくなってくるので、学校や社会に囚われず、興味の湧くものにはできる限りチャレンジできると良いですね。
頑張りすぎて息切れしてしまわないように気を付けましょう。
▽不登校の4つの段階について詳しく知りたい方はこちら
自分・子どもがどの段階なのか見極める時の注意点
4つの段階は、「今日から始動期!」といったように、はっきりと線引きされているわけではありません。
正しく見極めるには、「それぞれの段階ははっきり分かれているわけではない」ことを前提として、子どもの言動などから、冷静に判断する必要があります。
1.まずは子どものことをよく見てみること
まず大切なのは、日ごろの子どもとのコミュニケーション量です。
初期・本格期くらいの場合はコミュニケーションを拒絶する子どももいますが、子どもを見ずに子どもの状況を理解することはできません。
挨拶をする程度でもかまいませんので、会話するきっかけを作り、子どもの言葉や行動をしっかりと見るようにしましょう。
2.それぞれの特徴が出ない場合もある
今回、段階ごとに特徴をご紹介しましたが、これらはあくまで一例に過ぎません。
特徴が出ないこともあれば、別の言動がサインとして表れる場合もあります。
大切なのは子ども自身が何を感じ、どうしたいと考えているかです。
心配をかけないようにとこれらの特徴を隠そうとする子もいますから、注意深く見守るようにしましょう。
3.迷ったら前の段階
迷ったら前の段階であると心得てください。
「元気な日もあるけど、急にふさぎ込む時もある」はまだ本格期です。
「学校に行く日もあって、つい期待するが、急に行かないと言いだす」はまだ安定期(回復期)です。
親・大人はつい、「早く回復してほしい」「学校に戻ってほしい」と、子どもに期待してしまいます。
そんな期待を敏感に感じ取り、また、子ども自身も「早く元気にならないと」「心配をかけてはいけない」と感じて、大丈夫になった振りをしてしまうのです。
まとめ
今回は、不登校の回復にかかる期間についてお話ししました。 お子さんに対して今後どう接していけばいいのか、悩んだ時にはひとりで抱え込まず、いつでもお声がけくださいね。
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