【追記あり】古山明男さんと学ぶ「聞いて、集めて、届けよう~保護者の声」千葉市教育機会確保の会×未来地図

【追記】
こちらのコラムを『活用したい』というお問合せをたくさんいただきました。
古山さんの許可を得て、勉強会のスライドをクリックするとダウンロードできるようにいたしました。ご活用ください。

千葉市教育機会確保の会、未来地図ともに、2021年に不登校の子どものいる保護者の方を対象にしたアンケートを実施しました。
アンケートの結果から分かった「保護者の困っていること」や、保護者の声を上手に学校や行政に届けるコツなどについての勉強会を行いました。

  • 千葉市教育機会確保の会
    古山明男さん(代表)、渡辺忍さん
  • 未来地図 参加スタッフ
    Kun(アンケート担当)
    ヨーコYAYOIまひろりょう育ママ
  • 協力
    吉田みずえさん(保護者)

古山明男さん(古山教育研究所)


◆プロフィール
1949年千葉県生まれ。京都大学理学部卒業。
出版社勤務を経て、私塾・フリースクールを開き、学習支援と不登校の子どもとの交流に関わってきた。
オルタナティブ教育の啓発普及のための情報発信やネットワークづくりに努めている。
古山教育研究所』代表
おゆみ野の森でどんじゃらほい』世話人
教育の多様性を推進する会(通称おるたネット)』代表
千葉市教育機会確保の会』代表
千葉県フリースクール等ネットワーク」副代表

◆著書

変えよう!日本の学校システム――教育に競争はいらない』(平凡社2006)
ベーシック・インカムのある暮らし』(ライフサポート社2015)

◆自己紹介
私は、90年頃から私塾を始めて「生徒を選ばない」としましたら、不登校の生徒も多く来ましてね、そのうちに「不登校ってなんだ?」と調べるようになったんですね。そうしたら「不登校は日本特有の現象」だということがわかりました。
もちろん学校に行かない子は世界中にいるんですけど、発達した民主主義の国では「この子にはどういう教育が必要なんだろう」と考えるんです。
結論からいうと、不登校問題は制度問題。学校を作る自由を日本が認めていないことによって起きている、制度公害なんです。
こんな風に、不登校について話すようになったら、いろんなところから声がかかるようになりました。

※最新の活動は、古山さんのFacebookへ。
※不登校新聞社「不登校50年プロジェクト」に、古山さんの活動のきっかけや、取り組んできたことが詳しく取材された記事が掲載されています。記事はこちら。

渡辺忍さん(千葉市市議会議員)

◆プロフィール
保護者の立場から市民運動へ。千葉市教育機会確保の会のメンバーとして、フリースクールや居場所などを運営する仲間たちと定期的なミーティングを行っている。
千葉市議会議員渡辺しのぶオフィシャルサイト」に、プロフィールや活動の理念が詳しく掲載されています。

◆自己紹介
不登校の問題に取り組み始めたのは5年くらい前からです。
自分自身の子どもが不登校というわけではないですが、不登校について調べれば調べるほど、「今の子はよく頑張ってるなぁ」と思うようになりました。
現在、保護者の集う会を定期的に、年に数回開催しています。
繋がることで情報が次々に届くようになり、保護者の方から『未来地図』を教えてもらいました。

未来地図スタッフ


◆Kun
大学生、高校生、中学生のママ。
ブログ『ぽこあぽこ。。のんびり歩こう♪

◆陽
通信制高校1年長男と、小学6年生の次男のママ。
ブログ『ぼちぼちいこか

◆暁
長女、次女、長男の3人のママ。
ツイッター

◆ヨーコ
母子家庭で発達障害のある子ども2人のママ。
ブログ『「脱・普通」をめざす加藤さんちのこと。
2021年 社会福祉士になりました。

◆YAYOI
息子2人のママ
ブログ『のんびりのんきに生こう♪
みんなの居場所ありのまま】理事兼スタッフに携わっています。

◆まひろ
長女、長男2人のママ。
ブログ『もと不登校二人の子の母 まひろのブログ

◆りょう育ママ
発達障害の3人の子(中1・小5・小1)を育てるママ。
ブログ『あつまれ!凸凹ちゃん

参考:https://miraitizu.com/about/staff

吉田みずえさん(保護者)

「不登校を考えるアンケート(保護者向け)結果報告書」の執筆に協力したり、「多様な学びへの経済的支援について~自治体と民間教育施設の連携による実施事例から」の資料作成などの活動をしています。

勉強会の流れ

  1. 古山さんの支援の経験から
  2. ”困っていること”を図にしてみたら・・・
    「子どもの困っていること」「保護者の困っていること」そして「解決があるとき」
  3. 古山さんが読み解く『未来地図』アンケート結果
  4. 聞いてみよう

古山さんの支援の経験から

私はフリースクールもしていますが、保護者の方のサポートの方が仕事の中心なんです。保護者の方、特にお母さんがラクにならないと、子どももラクにならないですから。

「千葉市教育機会確保の会」という、フリースクール、夜間中学、外国人語学学校、学童保育などが集まってできた会があります。
子どもと保護者の困りごとを、行政や学校の先生に伝えるために、千葉市でアンケートをとりました。
行政の人たちは、市民一人一人の意見を聞いてしまうと、『えこひいき』って言われちゃう。
でも、アンケートでとったデータをもとに話せば、分かってもらいやすいです。

ちょうどそんな時期に、『未来地図』のアンケートがあることを知り、結果を見た時にビックリしたんです。
「ここには、保護者の本音がある」と。

回答が1000件以上も集まっていますしね。
これは大事なアンケートです。
文科省の出している調査の不登校の要因*って、現場の感覚からすると、「そんなはずない」って思うのです。
でも、いままで反論するためのデータがなかったのですが、これからは「未来地図」のデータを使って、反論できます。

*:児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査

不登校の子どもと保護者の現状について

古山さん:私たちは千葉市でも調査を行いましたが、保護者の方がどんなことに困っているか、という項目はありませんでした。
『未来地図』のアンケート結果にはそれがありますので、役に立ちます。
私なりにまとめさせてもらいました。

画像をクリックするとダウンロードできます

古山さん:『未来地図』のアンケートに、「子どもが母親から離れない」というのがあります。
子どもが母親から離れない、だから働けなくなる。正社員からパートになったとかもね。
世の中の一般的な見方だと、『小学生くらいになると、ひとりで留守番ができるのではないか?』と思われているかもしれませんね。
実際にはどうですか?

ヨーコ

私は子どもの調子が悪かったですし、放っていたら脱水症状になる危険もあったので、中2でしたが仕事を辞めましたよ。

 

吉田さん

私たち、この話だけで2時間くらい話せますよね。
ただ、子どもが『母親から離れない』、安全のために母親が子どもから目を離せない状態を、『母子分離不安が原因で不登校になった』という、解釈で良いのか、というお話となると…。

 

古山さん

そうそう、そうなんです。
学校だけではなく、多くのカウンセラーが、「母子分離不安があるから不登校になった」と言いますが、これは間違いです。
年齢がある程度高くなると、自分の部屋とかに引きこもることができます。
でも、低学年くらいだと、まだ親にしがみつくことしか出来ないんです。
それで保護者の方は仕事も出来ない状況になるんですが、これは母子分離不安ではなくて、子どもが激しい恐怖と不安に襲われているということなんですよ。

本当はね、涙があるだけなんです。苦しみがあるだけ。

そのことを、私自身の経験からまとめた典型的な例から、図にまとめてみました。
最初に、子どもの立場を中心に見ていきます。

©️古山教育研究所

画像をクリックするとダウンロードできます

まずね、一番上のところ、矢印のスタートのところです。
学校での恐怖や不安は言葉にならないんですよ。

朝起きられない、頭痛、腹痛などという形で現れます。

学校はね、『なんでそれくらいで来られないの?』ってなるんですよね。保護者にも、『頑張って来させてください』って言う。

親もなんとか行かせようとする。

そうすると子どもとしては、学校も親もわかってくれない状況になるわけです。そして、そのうち自分を責める。
そのあとは、静かに自分を責めるタイプと、暴言や暴力が出るタイプに分かれます。
でもね、たいてい、結局はなんとかなります。休んでるうちに、自発的な活動が出てきます。
そうして自立していくのが典型的なケースです。

次に、保護者の立場を見ていきます。

保護者の場合、最初はね、子どものことを『駄々こねてるだけ』って思うけど、
次第に『この様子はただならない』って思う。
だって幼稚園の時は分離が出来てたのに、ペターって離れなくなっちゃったりするので、『あれ?』って思うわけです。
だから大抵は、お母さんが先に子どもの状況を理解します。でも、お父さんはすんなりとはいかない。
学校はね、『頑張って慣れましょうね』って言うだけなんですよね。

ここで、母親の立場を中心にした図を見ていきましょう。

©️古山教育研究所

画像をクリックするとダウンロードできます

まず、母親が子どもを学校に行かせようとして親子バトルになるのだけれど、これは母親が負けます。
その後、母親は、子どもの不調を見ているだけでも、参っちゃいます。
そこに学校の無理解でしょ。
さらにお父さんも無理解。
そこから家庭不和に陥るケースが多いです。おじいちゃんおばあちゃんから追い詰められるケースもありますしね。
兄弟姉妹の関係もある。
母親の仕事に影響が出るケースも多いです。
何より、どこにも相談先がないことから、母親が孤立感を深め、自分も体調を崩してしまう。
これが典型的なケースなんです。お母さんが壊れちゃうケースが多い。
でもね、必死でやってるうちに、いい意味で諦めが出て、結果的に大丈夫だったってことが多いです。

そして、「解決があるとき」という図も作ってみました。

解決があるとき

©️古山教育研究所

画像をクリックするとダウンロードできます

まずね、学校への恐怖や不安が出てきたときに、学校から理解があれば、最初の傷が軽くてすみます。
教育機会確保法*ができてから、無理しなくていいよって言ってくれる学校も、少ないですが出てはきましたね。

家庭内不和に関しては、支援の手はまだあんまりないですね。
お父さんや祖父母の方にはね、専門家や教育委員会からね、『怠けや甘えではないんですよ』って文書とかが出ると理解が得られやすいです。
そしてやっぱりね、経済的支援は必要ですよ。
特に小中学生は、義務教育を受けられなくなっているんですから。

義務教育って、国語算数理科社会を学ぶことや、学校に出席してるではないんだと思うんですよ。子どものwell-being**、つまり子どもの幸せに最大を尽くすことが義務教育だと思うんです。

次に、相談先についてですね。
公的なカウンセラーもありますが、親の会につながって安心した、気持ちが楽になったって話はよく聞きます。

でもなにより、子どもが行ける場所をもっと作らないといけない。
学校に戻るのもいいけど、『あそこに行きたくない』って心に刷り込まれた子を戻すってことでしょ? 成功率は高くないです。
『学校は変わらないまま、子どもを戻す』は、学校にとって話がうますぎるよね。
それより、子どものwell-beingに特化したフリースクールなどのほうが定着率は高いです。
ほかに、習い事でも塾でもなんでもいい、子どもの行きたがるところがいいです。
最近は公的機関で、子どものwell-being中心のところもあります。

それから、私の経験で『学校に戻した方がいいだろうな』って感じる子もいるけど、

  • 無理せずに家庭を中心にして育てた方がいい子
  • 別のタイプの教育を用意した方がいい子
  • 発達障がいのある子

いろんなタイプの子がいるんです。
将来的に、色々な教育機関、教育方法が出てきたらいいですね。
「不登校に、一種類の解決しかないということはあり得ない。様々な子を吸収できる体制にならない限り、解決しない」って感じます。

*教育機会確保法:正式名称等は、文部科学省HPへ。
 NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが、・ご家族の方向け、学校の先生や行政・支援者の方向けに、分かりやすく解説したリーフレットはこちら

**well-being:人々の満足度。内閣府HPより。

未来地図「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」結果から

古山さん:未来地図「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」には、子どもの不登校により、保護者の方が困っていることの設問があって、自由記述回答が518件ありますよね。

それぞれの分類に沿って、私なりに抜粋したものをご紹介していきますね。

・学校の無理解に関する回答 90件

  • 学校は、学校へ来られない⼦どもが悪いという雰囲気だった。
  • ⼀番⼤変なのは、やはり学校と⼦どもの板挟みになること。
  • 先⽣の⾔動の端々に不登校を問題と捉えられていると感じて苦しくなる。
  • 中学の担任の理解不⾜。子どもは気持ちがあっても⾏動できない。
  • 発達障害に無知な教師が多いことに驚きました。

・家庭不和について 57件

親子

  • 暴⾔暴⼒で家族へ当たり散らしていた時期は⾟かったです。
  • 特に⽗親と⼦どもの関係が悪化し、それにより家庭内の空気が悪くなり板挟みの⺟親の⼼労が増す。
  • ⾼校進学が近づくに連れこどもの精神状態が悪くなり、親⼦のケンカが増えてきた。
  • 不登校になり、家庭内でのケンカが増え、精神的にしんどい⽇々。

夫婦

  • ⼦どもが不登校になった原因を夫婦で責め合い、夫からのモラハラがひどくなった。
  • 夫はただの怠けとしか受け⽌めないため、そこが⼀番キツい。
  • 夫婦で寄り添い⽅の考え⽅違いから、夫婦仲が悪化。家族関係にも影響。⼦どもも暴れる

きょうだい

  • 不登校の次⼥と他の兄弟が⼝を聞かなくなり、避けるようになった。
  • 弟との関係が悪くなった。弟が不登校である兄を⾒下す。
  • 兄弟とも不登校になり兄弟けんかも増えた。

・仕事への影響、経済的困難について 64件

子どもを放っておけない

  • ⼦どもがうつ状態で 1 ⼈で留守番が難しく、仕事を辞めた。
  • 家庭で過ごすことを選び⺟親は仕事を辞めました。
  • 親⾃⾝も体調不良となり休職。
  • ⺟⼦家庭ですが、⼩⼀を 1 ⼈で置いておけず、祖⽗⺟などの預け先もなく、仕事がままならず、収⼊も減り困っています。

経済的困難

  • 収⼊が減り⽣活が苦しく常に不安。学校に⾏けなくなったことより⽣活苦のほうが正直不安が⼤きいかもしれない。
  • フリースクールに通っていますが⽉謝が⾼い。⺟⼦家庭の我が家にとってはかなり厳しい。
  • 少しでも教育的環境に置くための出費がとても増えた。
  • 将来の事も考えると⾦銭⾯での不安も⼤きい

・相談先がない 48件

  • 不登校になったことを家族以外誰にも⾔えなかった。
  • 子どもは面談拒否。
  • 親⼦共々、家族以外の相談相⼿をみつけるまでが地獄でした。
  • なぜ学校に⾏けないのかが全くわからず、誰も何も教えてくれない時期が⼀番⾟かった。
  • 学校は、こちらの話は聞いてくれたが具体的にどうすればいいのか教えてくれなかった。相談先を教えてほしかった。

・親の孤立、不調 73件

  • 私が不安になってしまい、眠れず⾷べられず、苦しかったです。
  • ⼦ども⾃⾝が⾃分の事をほとんど話さないためどう向き合えば良いか分からず 不安だった。
  • 夜中の通話、台所を物⾊する⾳など、深夜未明の⼦どもの気配に眠りが浅くなり親は寝不⾜。
  • ⼦どもの為に⾃分の休⽇は全て相談や施設探し、病院受診に費やし、私の⼼が壊れそうなスレスレの状況が数年続いています。
  • 親の気⼒もすり減っていった。

このようにまとめさせていただきました。
たくさん書きましたが、あまり言いすぎるとね、どうですかね?
でも議員さんとかにもね、これが実情だと提示すると聞いてもらいやすいと思います。

Kun

まとめていただいてありがとうございます。
同じ立場の保護者がアンケートをとったことが、回答者の方からも、回答してもらいやすかったかもと感じています。
古山さんが、「解決があるとき」で提示していただいた中のひとつでもどこかが和らぐと、ゼンマイのようにお母さんの気持ちも和らいで、安心できるように思います。

 

吉田さん

お話を聞いて、改めて保護者自身が声を上げることが大事だと感じました。そして、古山さんや渡辺さんのように、支援者の立場の方たちのご協力を得ながら発信することで、客観性が増し、行政など、立場の違う人たちに働きかけやすくなることが、ありがたいと感じます。

 

千葉市における不登校の子どもたちの状況調査(保護者向け)

古山さん
ここからは、千葉市でとったアンケートについてご説明させていただきますね。

千葉市で限定して集めたので、数は64件とそんなに多くないです。でも、「千葉市の子どもと保護者の困りごとを、行政や学校の先生に伝える」という目的から考えると、「たくさん集まったな」って思います。

実施主体:千葉市教育機会確保の会
実施時期:2021 年 6 月 7 日~6 月 30 日
対象:不登校または元不登校の子を持つ保護者で、千葉市内に居住する人。
方法:グーグル・フォームを利用したウェブ・アンケートを、フリースクール、親の会などから、口コミ、SNS などを通じて拡散
目的:千葉市教育振興計画に提言する
回答数:64件
※アンケート結果全文は、こちらからお読みください。
【調査結果まとめ】
  • 不登校の中心は、繊細で傷つきやすい子どもたちや、特性のある子どもたちである。
  • 「学校の環境」と「教育方法」に合わない子どもたちが多い。
  • 多くが何らかの学校外施設・機関を利用している。
  • 要望は、「経済支援」と「子どもが喜んで行く場所」に集中している。

古山さん:まず、「不登校の理由と思われるもの」から説明します。

 

質問6 不登校の理由と思われるものすべてにチェックをお願いします。
集計結果(多い順)


不登校の要因の1位は、はっきりとした理由はわからない、でした。
これは未来地図さんのアンケートとも一致しますね。
私が今まで保護者の方から聞いた経験とも一致してますし、これが不登校の特徴でもあります。
子どもはね、多分ですが、言葉が用意されていることじゃないと答えにくい。
それと、言葉にしたことを受け入れてもらえる確証がないと言わないんですよ。あとは、親や先生が間違ってるって思いたくないんだと思います。

これらの理由をもう少し見ていくと、「はっきりした理由が分からない」は48%もある。
でも、子どもたちは何かしら訴えてるんですよ。この48%のうち、81%は他の要因と重複していましたから。
ただ、『なんでそのくらいのことで行けなくなるの?』と言われてしまうんですね。だからそのままにされてしまう。
理由が分かっても分からなくても、本人が追い詰められていることが現実なんです。

こちらは、何らかの身体症状についてです。41%が当てはまり、そのうち96%が他の要因と重複しています。
身体症状については、学校をしばらく休むと治ったり、放課後になると症状がなくなったりします。そのため仮病と誤解されたり、軽視されがちだったりします。
そうではなく、これは不登校特有のサインなので、おざなりにしてはいけないんです。

本人要因・家庭要因はHSCが非常に多かったですね。
もちろんいろいろな要因がありますが、特に繊細だったり、発達に特性があったりする子が不登校になりやすいのではと思います。

アンケートの結果や古山さんのご経験からの、繊細なお子さんたちが感じている学校へのしんどさは何だと思われますか?

 

古山さん
よく聞くのは、先生が誰かを叱る声がいやだと。
自分のことじゃないのに、繊細な子はしんどさを感じてしまうんですよね。

 

学校要因は、相談を受けていて非常に多い内容です。濃い茶色が学校の教育方法に関するもの、黄色は人間関係に関する要因です。
これらも重複していますので、その重複を取り除いた結果が以下になります。

重複を除くと、学校環境・教育方法に関するものの方が、対人関係よりも多かったのが意外でした。全回答者の66%、3分の2が当てはまりましたからね。
また、学校環境や教育方法に合わないが、頑張って通っている「隠れ不登校」と呼ばれている子も多いと言われています。

日本財団の調査の結果*では、無理して辻褄を合わせて通っている、「仮面登校」と言われている子が多いことも明らかになっています。

*:不登校傾向にある子どもの実態調査(日本財団)

相談先については、家族や担任の先生がそれぞれ80%程度ずつですね。
ただ、普通に考えると、結果はどうあれ、まず家族や担任の先生に相談すると思うんですよね。でもそうしていない人が相当数いる。
これはやっぱり、一番身近な人に相談できない状況の人もいるんだろうと推測しますね。

SC(スクールカウンセラー)については、学校復帰を言う人以外も増えてきたけど、それぞれ対応も違いますし、くじ引きみたいなものなんですよね。
相談機関自体はかなり増えてきたんですが、SSW(スクールソーシャルワーカー)が0件というのは意外でした。

こちらは利用している場所ですね。ただ、対象がフリースクールに来ている子だから、結果に偏りがある可能性は大いにあります。
利用している数の多さの順番というのは、子どもにとっては「ゆるさ」の順となっています。これが一番のポイントで、特にフリースクールなんかは子どもの安心・活動を引き出すことに特化したところですから。

習い事は目標はあるけれども、色んなところがありますからね。鍛え上げるところもあるし、楽しんでもらえばいいってところもある。学習塾は率は落ちますが、学校は行けないけど学習塾は行ける子もいますね。

緑は、公的関係です。千葉市の場合は、適応指導教室だけではなくて、何段階か準備してくれています。この調査では、民間を利用している人が多かったです。

要望に関しては、経済的支援と、子どもが喜んで行く場所が欲しい、というのに集中しました。当然ですよね。緑のバーは、情報や相談先がほしいという内容です。

学校に対する基本姿勢は、積極的支援をお願いしたい人もいますが、その3倍ほどの方は、そっとして欲しいを選ばれています。
これはどっちが多いからそうするってわけではないですよねえ。
両極端の意見があるので、学校も対応に困っていると思いますね。

まさにそのご質問どおりの難しさを感じています。さらには保護者の意見と子どもの意見も違うと思いますし・・・・。
古山さんが、両極端の意見を行政などに伝える場合、工夫していることなどがあれば教えていただきたいです。

 

古山さん
そのままね、データを提示して、「両方の意見がありますよね、難しいですよね、学校や教育委員会も大変ですよね」って言ってます。
無駄話とかも挟みながらね
学校も大変だなあとは思いますよ。

こちらは追加された選択肢です。千葉市での調査の場合は、要望を追加できるようにしたんですが、実質は要望の自由記述になりました。
これらを分類しますと、やはり経済的支援を望む声が多い。
「現状を理解して欲しい。」
「教育の選択肢を増やして欲しい。」
「学校が変わって欲しい。」
というような学校や行政の対応への声や、
「フリースクールの意味などを積極的に理解して欲しい。」
「将来の見通しが不安なので、それを提示して欲しい。」
という声がありました。

聞いてみよう


●行政と連携して何らかの取り組みをしたい場合、どのようにやりとりをすれば良いか、アドバイスがあればいただきたいです。

古山さん
先ほども申しましたように、データを提示することは大事です。
また、1団体で行かないことですね。行政は『公器』なので、一団体が要望を出すことで、『利害関係が発生している』と思われちゃうことを避けるので。市民団体を作って、連携して提示すると、行政側は受け止めやすいです。
また、議員さんは、ここの生活者から困りごとを聞き取る立場の人たちなので、力を借りて、議員さんから話を持っていってもらうのも良いと思います。
渡辺さん、どうですか?

渡辺さん
そうですね、一人の議員にではなく、いろんな議員に話すのも大切だと思います。その中で、動いてくれる議員がいれば、どんどん話をしてください。
『親が相談したことが学校に伝わって、子どもの立場が悪くなったらどうしよう』とか、そのようなことを気にする方もいらっしゃいますが、議員をもっと使ってもらって良いんです。

議員が現場の声を知ることが大切で、保護者の声を知ることで、リアルな声を届けられますから。そうしてもらうことで、教育委員会が『出来てるよ』と思っていることも、実は出来てないことが分かるわけです。

具体的なことも、もっと言ってもらっても良いんです。
●保護者は当事者なので、交渉などの際に、つい感情的になることがあります。コツがわかっていたら冷静になれることもあると思うので、なにかポイントがありましたら教えてください。

古山さん
まず、分からせようとすることって、相手にとっては負担なので、そうならないようにしてはどうでしょう。

行政との関わりが上手なある方が、『行政は叩くと固くなる』とおっしゃっています。
言葉で叩いちゃうと固くなってしまうので、柔軟でいてもらうためには、叩かないことですね。

ただ、話し方や表現の仕方は、その人らしさというのもありますからね。一概に「こうするといい」というものはありませんが、言葉(単語)と言葉の間の取り方は大事だと思います。

また、YouTubeなどでも、「この人の話がすーっと耳に入ってくるなー」って人がいると思うんですよ。そういう人を真似してみてもいいかもしれません。
がーっとなって話をするのはね、やっぱりあんまり良くないですからね。

渡辺さん
相手のことも認めることが大切だと思います。
先生も教育委員会も大変だなって思ったうえで話すことですかね。
攻撃するとガードが固くなりますし、対立しているのではなく、すれ違いが起こっているだけですから。
立場や見ている視点がちがっているだけってことをご理解いただきたいなと。

教育機会確保法など、法律について親の⽴場から話したり、資料を渡したりする際に、一言添えたいのですが、どのような点に気をつけたら良いでしょうか。
資料は、全国登校拒否不登校を考える全国ネットワークのリーフレットや、未来地図のアンケート結果を持参しています。

吉田さん
少し補足ですが、保護者が、教育委員会や行政に、「国の法律を知ってください。法律に沿った支援をしてください」と言うのは、おこがましいと言うか、変な感じがしますよね。しかし、古山さんや行政職員の方、議員の方々がよくおっしゃるのですが、『自治体の教育委員会でも、知らない人がいる』とのことです。
未来地図のアンケートで、要望や意見を報告書にまとめる際にも、『学校や教育委員会は◯◯ができていない』ではなく、「法律で保障されたが、子どもたちに届いていない」という分類や整理を意識しました。

古山さん
「親の立場です、これで、わたしも助かりました」という風に、ご自分で感じた言葉を添えられるのが良いのではと思いますよ。

●保護者の立場から親の声を発信する時の注意点などがありましたら教えてください

古山さん
聞く耳を持っていない人への正攻法は、
先に相手にどんどん話させて、出きったところで、こちらの立場を伝えるというやり方。
まず相手のお話を聞いて、そして先ほどお伝えしたような感じでお話してもらったらいいんじゃないかな。

●ホームエデュケーションについて、古山さんのお考えをお聞かせください。

古山さん
私はホームエデュケーションが、オルタナティブ教育の本命だと思っていちばん力を入れているところなんですよ。
理由はまず、お金がかからない。
やりたいと思ったら明日からすぐ始められるし、逆に「明日から学校戻ります」ってこともできる。

日本の子どもたちって恵まれてて、不思議なことに放っておいても字は読めるようになります。書くのにはサポートが必要ですけどね。あと計算と。
ただ計算も、お金の計算も自然と身につきます。不思議ですね!

ただね、保護者の方はどうしても、「うちの子に理系の才能があるかもしれないし」って思ったりちゃうんですよね。
それはその気になった時に、自分で勉強できるようになったら勧めたらいいですかね。
そういう教材を実は作ろうとしてるんです。YouTubeとかあるものを使ってね。

どんな教育でも、長所と短所があります。なにをやっても全部が万々歳ってことはないことを理解する必要があるかな。
ただ学校と同じことを家庭でやろうとしても無理があります。ご家庭で教育をする場合は、子ども自身が興味・関心があることからYouTubeを見るとかも含めて取り掛かる方が、結果は良いです。

●高校の場合は欠席日数が留年の判定にも関わり、退学にもつながりやすいため、『学校が辛くなったらまず休む』という考え方をしづらい保護者の方や、子どももいます。古山さんがご相談を受けたときはどのようにされていますか?

吉田さん

留年や退学によって教育を受ける機会を失うという考え方もあるようですが、広い意味での「教育」と、『学校に在籍して学校で授業を受けること』はイコールではないですよね。

 

古山さん
高校生年齢の子どもを相手にすることは多いです。高校にはこだわりなさんなって言ってますね
「合わなかったらさっさと乗り換えればいいよ」って伝えています。

例えば高卒認定。
一見問題を見ると難しそうですが、ワンパターンさえ覚えれば良いんです。
中学のレベルが理解できていて、YouTubeや漫画をちゃんと見て、理解できるレベルがある、そして本人が2〜3か月真剣に勉強すれば合格点になるんです。回答も4択ですからね。
通信制高校も本当に色々な対応があります。はっきり言ってね、需要と供給の関係になってて、お金さえ出せば卒業証書買えちゃうようなところもね、ありますから。

吉田さん

保護者が”それまでに得ていた価値観”にこだわらなければ…という感じですかね。
子ども自身が、卒業証書や学び方にどの程度重きを置いているか。前提として、健康面でも無理していないかなど、その時々の子どもの状況をよく見ることが大事ですよね。
ちょっと脱線しますが、私自身「出席日数に関係なく進級させてくれればいいのに。」と思った経験はあるものの、
それを『進級させるべきだ。』とは考えていません。制度や仕組みについて言及する時は、子ども全体、社会全体など、いろんな方向から考える必要があると思うからです。
個人の思いを社会課題として発信するためには、専門的な知識や経験のある人のお話を聞いて勉強するなど、客観視する工夫が必要だと思います。

 

子どもは自分を責めることが多いですよね。学校がトラウマになって、ひきこもってしまうこともありますし。そのように傷ついた子どもに対して、どうやって支えたらよいでしょうか?

 

古山さん
進学校の場合は、勉強が出来なきゃダメって価値観になってる子も多いので、その価値観から抜けることも大切ですね。
そんな場合は学校以外のお話を普通にする、とかね。
ゲーム漬けでもいいんじゃない?
結局は学校気にしなさんなってことですよ。

ヨーコ

ゲームを通じて、オンラインで仲間も出来ますしね。

 

子ども自身の困りごとをワガママと感じずにそのまま受け止めて、拾い上げるには、保護者自身どのような工夫が必要だとお思いでしょうか?

古山さん
親から見たらゲーム三昧で、ワガママと思ってしまうこともありますよね。
ご自分に厳しい人ほど、人のことをワガママに感じるんですよ。
そう言うとね、自分に厳しい人はまた、「そうなんです、私が自分に厳しいから・・・」って言って自分を責めちゃうんですよね。最初の自己紹介で、大阪の方が「笑いが大事」って言ってましたよね。あれいいなって。

中にはワガママもあるかもしれないんですが、なにか苦しみを訴えているのは、ワガママではないんですよ。苦しみを抱えてるのをワガママって言っちゃうのは非常に危険だってことを常識にしたいですね。
大人たちもね、あれが辛い、しんどいってため息ついてるじゃないですか。大人がそう言ってるのと同じですよ。

ヨーコ

うちの息子が不登校だったとき、ゲームは楽しくてやってるわけではないけれど、ゲームしかできないって言ってました。
でも、その時ネットで出来た友達は、みなさん年上でしたが支えてもらいました。
吉田さん
学校復帰を目指す保護者の方も一定数います。「子どもがそう言うから」とおっしゃったり。だから学校を変えようねって言う話が出ることも多いんですが、そのことについてお話お聞かせいただけますか?

 

古山さん
理解は広がりつつあるとは思うんですけどね。
個人的には、学校は非常に変わりにくいところだと思ってるんです。頑張ってくれてはいますけどね。だからもう外側に作っちゃえって。そしたら学校も変わるから。
子どもが逃げ出してるって現象が不登校なんですよ。そうやって子どもが逃げ出して初めて分かって、変わっていくと思っています。
実例でいいところあったら真似してやりたいから、紹介してくださいって言う議員さんもいらっしゃいます。

親の会でできること

古山さん
親の会を作っていきたいって渡辺さんがおっしゃっていたんですけど、どうですか?イメージ湧きました?

渡辺さん
親の会を作るためのイメージはわいたんですよ。
ただ、熱量があって、役員をやっているような人は、ある意味抜けたというか、不登校いいねと思う保護者の方が中心になってるように感じるんです。その方たちが場を作ってる。
事業者の方たちが親の会を支えていくってことが出来たらいいのかなと。
千葉市の場合になりますが、そういう形がいいのかなって思いました。
何よりも、情報がまとまってるってことが重要だと思うんです。
未来地図さんがそれはもうされているので、ぜひ一緒に活用しあえていけたらいいなって思っています。
事務局をどこが持つかの難しさもありますが・・・。

古山さん
ガイドを行政といっしょに作るのも良いですよね。
そういえば、「みんなの居場所ありのまま」の不登校ガイドはよく出来てますね。

YAYOI

ありがとうございます。ただ、地域の学校まで十分に行き渡ってないんです。
作成しても活用されないのは切なくて・・・・。

 

渡辺さん
渡してくれる先生がいないってことが問題ですよね。

学校の先生の意識って、大事だなって思います。

 

古山さん
ところで、保護者が親の会の活動や、啓発活動の担い手になることについては、どうですか?
親の会が本気で頑張ったら、3年で社会が変わると思うんです。助成金なんかも利用できる可能性もありますし。

りょう育ママ

家庭には自分の子どもが当たり前にいますので、活動に割ける時間や労力などは、どうしても限られてしまいます。
なので、できる範囲でやることが、大切だと思っています。

 

Kun

未来地図のスタッフの中でも、それぞれ得意なこと、苦手なことが違います。みんなが自分で、自分にできることを考えて、できる範囲で活動するようにしています。

そのように、小さくてもいろんな活動が、あちこちで生まれ、自分にできることを無理のない範囲で行う流れがたくさん出来たら、素敵だなと思っています。

メディア

古山さん
先日、千葉県のフリースクールでうわさの保護者会の取材を受けたんですよ。
最近すごくいいところのタイミングが来ていると思うんです。
この道30年の中で熟してきたってね。機運は追い風だと思いますよ。
※この取材については、2021年11月に放送されました。

まとめ

  • 古山さんだからこそ言えること
    「学校気にしなさんな」
    経済的支援の必要性
  • 未来地図の意味、必要性
    【相談先】【孤立】は未来地図の活動の意味や必要性を改め感じた
  • 保護者の気持ちの安定
    【身体的不調】【家庭不和】
    これも保護者が気持ちを整えて、落ち着いてくると変化するんだろう
    風通しやバランスが大切
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