「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」への寄稿①野村 俊幸さま

『未来地図』が2021年 春に実施した
「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」へ野村 俊幸さまよりご寄稿をいただきました。

[結果報告]
https://miraitizu.com/wp-content/uploads/survey_2021.pdf

[集計結果・別添]
https://miraitizu.com/wp-content/uploads/survey_2021_att.pdf

[概要版]
https://miraitizu.com/wp-content/uploads/digest.pdf

【寄稿】「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」集計結果に寄せて

2021年8月27日

社会福祉士・精神保健福祉士
登校拒否と教育を考える函館アカシヤ会代表
NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク理事
野村 俊幸

はじめに
本稿は、先輩ママたちが運営する不登校の道案内サイト『未来地図』が、2021年2月 27日~3月26日に実施した「不登校を考えるアンケート(保護者向け)」集計結果に寄せたものです。

1.学校に行っていない時期は、どこで過ごしているか 設問(5)

[別添]P.5【図4】

どこで過ごしているかについて、適応指導教室が12.2%に対し、各地の居場所・フリースクール・オルタナティブスクールが計12.7%です。
このように民間の自助努力の方が公的場所より多く、大きな役割を果たしています。しかし、民間には財政支援がほとんどないのは大きな矛盾です。

2.「不登校の要因」について、保護者が当てはまると思うもの 設問(6)(7)

[別添]P.8~14

不登校の要因をめぐる保護者と学校を通じた文科省調査※ とのギャップの大きさは、是非とも社会に広く訴えていきたいと思います。

保護者の1位が「子ども自身も理由がよく分からない」で、これは不登校の実情をよく反映しています。子ども自身が理由を語れないくらい、いろいろな要因が絡み合って追い詰められていることを周囲が理解してあげることが不登校への関わりの出発点だと思います。
また、「体調不良」が3位、「無気力・不安」が4位の上位でした。これは保護者から見ての判断であり、必ずしも子ども自身の状態を正確に反映しているとは限りません。
多くの場合、子ども自身が学校生活に辛さや苦しさ、違和感などを強く感じていても、そのことを子ども自身がうまく訴えることができず(まさに要因第1位の状態です)、そのストレスから身体や生活がそのように反応してしまうのだと思います。
つまり、体調不良も無気力も、不登校の「要因」ではなく「結果」なので、安心して学校を休むことを保障すると、かかる時間はそれぞれですが、大半はその状態が改善されます。
また、保護者の2位が「教職員の関わり」で37.4%(表1)、主要な要因でも2位で13.7%(表2)ですが、文科省調査では、中学では1.2%(表3)しかありません。
「いじめ」については、保護者は17.8%で10位(表1)ですが、主要な要因は7.5%で5位(表2)※ に上昇します。つまり、いじめがとても大きな要因であると保護者は感じているのですが、文科省調査では中学校で0.3%(表3)しかありません。ところが、同じ「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」※1再掲では、いじめの認知件数が61万2496件で過去最多を更新していますので、不登校調査ではこのことが全く反映されていないわけです。つまり、学校の調査はいかに自分たちに都合の良いものになっているかが、如実に示されていると思います。

【未来地図】本アンケート「不登校の要因」について保護者が当てはまると思うもの

※1 文部科学省「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の課題に関する調査結果について」
 https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf
※2 「その他」を除いた順位。

3.子どもの不登校により、保護者が困っていること  設問(8)

 [別添]P.15~17

 問(8)の「困っていること」もとても重要で、「学校とのやりとり」が第2位で、学校の関わりが不適切なことがよく分かります。なので、本来は学校が良き相談相手になるべきなのに「相談先が見つからない」が4位にランクされてします。また、「自身の体調・精神的不調」が第3位ですので、保護者への適切なサポートが求められています。

4.学校に対して保護者が望むこと  設問(10)(11)

[別添]P.18~20

 学校に望むことはどれも切実なものばかりで、声を大にして訴えたいことばかりです。
教育機会確保法と、それに基づく「不登校児相生徒への支援の在り方について」の文科省通知が発出されたにもかかわらず、不学校現場への浸透が不十分なことを示しています。

5.不登校について誰に相談しているか  設問(12)

[別添]P.21~22

 相談先では、民間団体(フリースクール等)が約15%、「親の会」は約36%ですから、まだまだ少なく、このような活動について学校や教育行政がもっとしっかり理解し、連携する努力をしていただきたいと思います。

6.自由記述回答 設問(14)~(18)

[別添]P.24~28

 自由記述回答に寄せられた生の声もひとつひとつが切実で重要なものであり、これからの不登校政策の改革のみならず、日本の教育改革についての大事な問題提起になっています。

以上

 

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