普通の子

ある日、我が子が校舎から飛び降りた。
原因はいじめか
我が子は被害者か
まさか、加害者なのか

母親は息子の事故を追いつつ、自身に起きた小学校時代のある記憶を回想する。
軸になる子ども密室世界とそれを取り巻く環境は、過去現在どちらの描写も実社会で起きていることと重なる。
ラスト10ページに綴られた、かつての同級生から母親へ宛てたメール文。
本文〆の二行に、私の胸は苦しくなった。

人は我が身に起きる最悪の事態を浅はかに回避しようとすると、他人を巻き込み最悪の沼にはまる。
この母親はどこかで気づき、我が子や被害者の真実の声に耳を傾ける日がやってくるのだろうか。

連鎖を止めるには、おとなが目を背けず現実を直視することだと再認識させてくれた小説だった。